何度見返しても腹が立つ。
テニスの全仏オープン、日本時間6月4日に行われた女子ダブルス3回戦で、加藤未唯選手が打ったボールが偶然にも、ボールガールを直撃。一度は警告を言い渡されたものの、対戦相手が抗議した後に主審と大会スーパーバイザーが判定を覆し、危険な行為と見なされ、失格処分に。賞金とポイントも剥奪されたと、加藤は試合後の会見で明かした。
あまりに不条理な裁定に、世界中のテニスファンから抗議審判のプロテニス選手協会(PTPA)は「加藤未唯選手の全仏オープン失格に対する協会の反応について」と題した声明を発表。「不当で不均衡で不公平なものだった。偶発的で攻撃性のない事象であることは明らかだ」とし、加藤が剥奪された推定600万円の賞金とランキングポイントも返されるべきだと求めた。
15分も泣き続けたボールガールと、煽る相手選手、動画を見返すこともしない主審。ボールが頭に直撃したボールガールを責めるのは可哀想ではあるが「なぜ、あんなドン臭い少女がボールガールに選ばれたのか」という疑問は残る。テニス誌記者によると、
「テニスはもともとヨーロッパの貴族のスポーツなので、全英や全仏のボールキッズは地元校の推薦で決まります。特に全英、ウインブルドンの場合、故エリザベス女王も生前、センターコートに観戦に訪れたこともあり、地元名門校のテニス選手が選ばれてきました」
つまり全英、全仏のボールキッズは元貴族など、上級国民の子供が担当する名誉職。京都の祇園祭でお稚児さんになるのに子供の容姿を問わず、地元の名士の財力がモノを言うというのと同じなのだろう。
加藤選手によれば、彼女に失格を言い渡した大会スーパーバイザーは、
「だって、ボールガールは泣いているじゃないか。私が呼ばれてオフィスを離れてからコートに着くまで、5分はかかった。なのに彼女は、まだコート上で泣いている」
と言い放ったという。このスーパーバイザーの発言が、ボールガールの両親への忖度なら納得がいく。アジア人選手が、ヨーロッパの上級国民の子供の頭にボールを当てて、泣かせたのだから「失格」「賞金没収のペナルティー」を課さなければ、全仏関係者、スーパーバイザーがフランス社交界から吊し上げられる。
ちなみにWBCの東京ドームで颯爽とボールパーソンを務めていたのは、野球やソフトボール経験者。ファウルボールが当たる危険があるので、公表されている募集要項には「実技試験がある」と書かれている。
かねてからボールキッズの保護者から大会主催者にクレームが入り、運営に影響が出ていると問題視されていた4大大会。今回の問題をきっかけに、ボールキッズ制度を廃止すればスッキリする。
(那須優子/医療ジャーナリスト)