リオ五輪の男子テニスで日本選手96年ぶりのメダルとなる銅メダルをもたらした錦織圭。振り返れば今回のリオ五輪は、トップ10の選手のうち5人がケガやジカ熱の不安などから欠場し、一部ファンからは「錦織も欠場してほしい」などという声もあがっていた。
「もちろん、錦織に出てほしくないという意味ではなく、脇腹の故障があるのだから五輪は欠場して体を休めたほうがいいのではというファンの思いがあったんです。しかし、錦織自身が五輪への出場をとても楽しみにしていたようです」(スポーツライター)
海外生活経験のある民放局員は、錦織が五輪出場したことをこう分析する。
「海外で暮らしていると、自分のアイデンティティやナショナリティへの思いが強くなるんです。特にアメリカは多民族国家で、イベントや行事で国旗に忠誠を誓ったり、国歌を歌うことも多いので、おのずと祖国を意識することが多いのです。そのため、錦織は“日本のために”という思いが、日本で暮らす日本人よりも強いのかもしれません」
錦織は選手村で陸上100メートルのウサイン・ボルト選手に遭遇。「サインしてもらいたかったけど勇気がなくて頼めなかった」と語っている。また、競泳800メートルリレーで銅メダリストの松田丈志選手は、帰国後の記者会見で錦織が『ずっと選手村にいて食事もとっていた』と語っており、錦織にとってはリオ五輪そのものが気分転換の場であったのかもしれない。
(伊藤その子)