今年上半期の3歳牝馬クラシック戦線は、リバティアイランドの独壇場に終わった。
1冠目の桜花賞(阪神・芝1600メートル)、続く2冠目のオークス(東京・芝2400メートル)で繰り出した「異次元の鬼脚」は、10年に一度の「怪物牝馬」と呼ぶにふさわしい、驚異的なパフォーマンスだった。
陣営によれば、同馬は今夏を滋賀県にあるノーザンファームしがらきで過ごした後、そのまま秋華賞(京都・芝2000メートル)に直行して3冠獲りを狙う予定だという。当然、ダントツ人気に推されるだろうが、怪物牝馬にも死角がないわけではない。
実は鞍上の川田将雅が馬上で思わず漏らした「意外な弱点」が、JRAのジョッキーカメラの動画に収録されているのだ。これは騎手のヘルメットに装着された小型カメラによって録画されたもので、手綱を握る騎手の目線からの迫力あるレース映像のほか、ゴールイン後に騎手が口にした生々しい肉声などを視聴することができる。
まずは桜花賞。誰もが「これは届かない!」と感じた最後方からの差し切り勝ちを収めた後、スタンド前に引き返してきた川田は、次のように道中の行きっぷりを口にしていた。
「今日は全然、進まんかったわ。全然。何してんねん、と言いたいくらい」
ところがオークスでは、真逆の行きっぷりを見せる。先行集団の直後の位置からの圧勝劇を決めた後、川田は道中の様子を、厩務員らにこう伝えているのだ。
「今日は気持ちが入ってたけど、ずっと力んで(走って)いた」
川田とも陣営関係者とも親しいホースマンが、コトの核心に迫る。
「行きっぷりの悪さと折り合いの悪さは、いずれもレースにおいては致命的。リバティアイランドといえども、ペースや展開によっては、桜花賞は踏み遅れと差し遅れで届かず、オークスは抜け出したところで差される、という結果に終わった可能性がある。この悪いクセが解消されなければ、秋華賞では黄信号が灯ることになるでしょう」
カギを握るのは、ひと夏を越しての成長だ。10月22日に行われる秋華賞では、寸分のスキすらない、完璧なレースを期待したい。