ryuchellに、日本の政治家ほどの神経の図太さがあったなら──。
7月12日に亡くなったタレントのryuchell(りゅうちぇる、本名=比嘉龍二)が生前、ネット上で誹謗中傷されていたことを受けて、自民党議員や大阪府の吉村洋文知事が、とんでもないことを言い出した。ネット投稿を取り締まるというのだ。
自民党の牧原秀樹衆院議員は自身のTwitterで、次のような持論を展開。
「SNSで誹謗中傷をして侮辱罪等の刑法犯に該当する者はアカウントを削除した者も含めて『すべて』逮捕すべきだと考えます。言葉の暴力はあってはなりません」
吉村知事も同様に、
「この9月にネット上の差別や誹謗中傷への対策強化の条例案を出す。1年かけて専門家会議の意見を聞き、ネット上の差別には大阪府が発信者に直接注意指導を、誹謗中傷には幅広い相談体制の充実を、その他、対策を条例化する」
なんと、今秋からのネット利用規制を検討していると明らかにしたのだ。
正しいことを言っているように錯覚するが、誹謗中傷であるかどうかの判断をするのは国家権力なのだから、中国共産党やロシアの「言論弾圧」「ネット規制」を日本でも断行する、と言っているに等しい。
ryuchellのSNSには自殺を煽るような卑劣な投稿が寄せられていたが、今のところ、死の原因が誹謗中傷だったと決定づける証拠はない。
日本よりも芸能人や有名人、スポーツ選手への誹謗中傷が激しい韓国では、全国民の個人情報とインターネット上の個人を識別するIPアドレスを紐づけている。
これは誹謗中傷を防ぐ目的もあるが、子供達を薬物や性犯罪から守る目的、北朝鮮人や中国人が自国民になりすまして情報撹乱、世論誘導するのを防ぐ目的もある。精神や人格を病んで「他人を攻撃することに快楽を覚える」異常者のインターネット利用を制限するだけでも、誹謗中傷とそれに伴う自殺抑制効果はあろう。
ryuchellに卑劣な誹謗中傷をぶつけた匿名アカウントが、日本人のものとは限らない。朝鮮半島有事に備え、徴兵制とIPアドレス管理を導入する韓国と違い、平和ボケの日本では、SNSのアカウントなんて作りたい放題。外国人が誹謗中傷をひと言書くだけなら、翻訳機能すら不要だろう。
ryuchellの自殺を政治利用して言論弾圧に乗り出す前に、自民党議員や吉村知事には、海外ユーザーのアカウント規制、マイナンバーとIPアドレスの紐付けなど、やるべきことはいくらでもある。以前、本サイトでも取り上げたが、勤務中にSNSに投稿して診療業務を怠っている大阪府立の医療機関職員の処分が先だろう、とツッコミを入れたくなる。
高須クリニック・高須克弥氏の三男で、名古屋院長の幹弥氏は自身のYouTube動画で、精神的に不安定な人がネット利用することの危険性に言及した。性別に違和感を抱く人がホルモン治療を受けることを前提に、次のように注意喚起しているのだ。
「ホルモンをいじることでホルモンバランスが変化すると、メンタルが不安定になったり、落ち込みやすくなったりとか、鬱になったりということはある。そういう方は特にエゴサーチや、メンタルが病まないようにする配慮とか経験が重要」
ホルモン治療中の人や、気分が落ち込んでいる人、自己否定感の強い人はSNS使用をやめた方がいい。どうしても承認欲求を抑えられないなら、不特定多数の誹謗中傷を避けるために、鍵をかけよう。
(那須優子/医療ジャーナリスト)