夏の登山シーズンに入り、全国で山岳遭難が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大もあり一時は減少傾向にあったものの、2022年の遭難発生件数は3015件、遭難者総数は3506人で、いずれも統計をとり始めた1961年以降で最高を記録。死亡・行方不明者数は327人で、前年から44人、15.5%も増加している。
遭難の理由は様々だが、規制解除で登山を再開させ人が増えたことに加え、コロナの影響で体力が低下し、滑落や転倒するケースが急増しているという。また登山者の年齢が高齢化していることも指摘されている。
では、もし山で遭難や道迷いに遭ったとき、あなただったらどうするだろうか。場所によっては携帯電話の電波も入らず周囲に人の気配が一切ない場合、とにかく下山しようと必死になってしまうのではないだろうか。
登山ジャーナリストが語る。
「最近の登山ブームで多くの人が山を訪れていますが、遭難時に冷静な行動をとれる人はまだまだ少ないと思います。大きな間違いのひとつは、沢伝いに山を下ろうとすること。水の流れに沿って下ればいずれ下山できると考えがちですが、沢には途中、急な崖や滝などがあり、無理して下ると転倒して骨折するリスクが高まります。また、急な大雨で鉄砲水が発生することもあるので絶対にNG。道を見失った場合は、無理に下ろうとするのではなく、頂上に向かうのが正解です」
疲労しているときに再び頂上を目指すのは気力を要するが、登れば登るほど登山道は集約されて、いずれは頂上でひとつになる。その間に正規ルートを発見できれば、あらためて、そこから安心して下山できるのだ。
また、骨折などをしてしまったら、無理に動かずに体力を温存させ、救助を待つのが鉄則。そのためにも登山する前は必ず「入山届」を出すことが大切だ。
これから秋の紅葉に向けて登山者が増えてくる。くれぐれも無理をせずに、自分の体力にあった山を選び、山歩きを楽しみたい。
(ケン高田)