お盆休み明けの8月16日、時事通信社が中古車販売ビッグモーターと損保ジャパンの「疑わしい関係」について、独自記事を配信した。記事は「損害保険ジャパンが昨夏、ビッグモーターへの顧客紹介を、社内の慎重派の反対を押し切って再開していた」というものだ。これを受けて損保ジャパンの関係者は、
「これから損保ジャパン社内の派閥抗争と暴露合戦が本格化するでしょう」
と切り出し、次のように語るのだ。
「損保ジャパンの前身は、安田火災海上保険と日産火災海上保険。さらに2014年に日本興亜損害保険が合併した。メインバンクはみずほ、三井住友、三菱UFJとバラバラで、企業風土も経営方針も水と油ほど違っていました。もう社内人事はグチャグチャ。さしずめ、お公家さんとフーテンの寅さんが机を並べているようなものです。ビッグモーターは日本興亜損保の取引先で、兼重宏行前社長の長男・宏一前副社長も日本興亜損保に勤務していました。旧財閥系の安田出身の幹部はビッグモーターの取引自体に慎重なんですが、日本興亜損保出身の幹部に押し切られたと聞きました」
金融庁はビッグモーターの保険金不正請求について7月31日、損保ジャパンに報告徴求命令を出した。さらに8月4日には、私鉄大手向けの火災保険料などを事前に調整していた問題で、損保ジャパンを含む保険大手4社に、追加報告を求めている。そこで注目すべきが、ビッグモーターの街路樹損壊や車検不正疑惑を黙認してきた、国土交通省の「職員向け団体保険」の存在だ。
国土交通省の職員向け損害保険パンフレットには「割引率40.15%」「割引率33.5%」の文字が躍る。子供向けの損害保険は東京海上、医療保険は三井住友海上が取り扱っているが、それ以外の保険商品は損保ジャパンの「独占」となっている。
40%、33%を超える破格の損害保険料割引は団体割引に加え、保険支払い実績を加味したと説明されている。われわれの自動車保険、火災保険の保険料は自然災害の増加を口実に、40%から50%も引き上げられている。ところが国交省職員は40%値引きの厚遇を受けているのだから、損保ジャパンも国交省も、あまりに顧客と国民をナメている。
ビッグモーターと損保ジャパン、国交省のズブズブの関係については金融庁と公正取引委員会、人事院の調査の行方を見守るしかないが、岸田内閣は支持率アップのため、9月以降に内閣改造をすると言われている。
岸田文雄総理が、ビッグモーターによる数々の不正を看過してきた国土交通省の大臣ポストをなおも公明党に譲るのであれば、増税と食料品の値上がり、さらに保険料まで値上がりして生活が逼迫する国民の怒りと不信感は、さらに増すこととなるだろう。
(那須優子/フィナンシャルプランナー)