9月5日にインドネシアの首都ジャカルタで開幕したASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議。これに先立つ8月28日、習近平国家主席率いる中国が公にした2023年版の「標準地図」が、世界的な大批判を浴びている。
というのも、今回の新標準地図の公表は、ASEAN首脳会議が開幕する直前のタイミングを狙ったものであり、かつ、新地図では他国と係争状態にある領土や領海が勝手に「中国のもの」と明記されていたからだ。
例えば領土については、インド北東部のアルナチャルプラデシュ州の一部やカシミール地方、フィリピンのスプラトリー諸島(南沙諸島)やベトナムのパラセル諸島(西沙諸島)などが、一方的に「中国領」とされている。
領海も同様だ。海洋上に引かれた領海線を9本から10本に増やした上で、南シナ海のほぼ全域を中国が管轄権を持つ海域だと主張。さらに、ボルネオ島のマレーシア付近の海域を「中国領海」と主張したあげく、新たな領海線で台湾を囲むようにして、露骨な恫喝をかけているのだ。
これらの暴挙に対して、領土や領海を「地図上で奪われた」関係各国は、一斉に反発。9月7日に閉幕したASEAN首脳会議でも、マレーシアのアンワル首相は、中国側の主張は断じて受け入れられないとする、激しい反発の声を上げていた。
習近平政権の動静をウォッチしてきた国際政治学者は、次のように吐き捨てる。
「既成事実を一方的に積み上げて、なし崩し的に現状変更を迫るのは、独裁者・習近平の常套手段。中でもASEAN首脳会議を見据えた今回の挑発は、改めてドロボー習近平の本性を全世界に晒すことになりました。なのに習近平も中国政府もシレッとして、国際社会の非難など意に介さない。『盗人猛々しい』とは、まさにこのことです」
ちなみに今回の新地図で中国は、沖縄県の尖閣諸島に属する「魚釣島」を「釣魚島」と表記している。要するに「尖閣は中国のもの」とクギを刺しているのだ。
尖閣諸島は日本固有の領土であり、中国との間に領土問題は存在しないが、ドロボー習近平の鉄面皮には、ゆめゆめ警戒を怠ってはならない、ということだ。
(湯川歩)