社会

痔が悪化して死んだ戦国大名の「戦闘中で治癒できなかった」という悲劇

 痔で苦しむ現代人は多いが、その痔が原因で人生がジ・エンドならぬ「痔・エンド」になってしまった武将がいる。現在、放送されているNHK大河ドラマ「どうする家康」にも登場する徳川四天王のひとり、榊原康政の三男・榊原康勝だ。

 康勝は三男だったが、慶長11年(1606年)に父が病死したことで、上野館林藩10万石の遺領を継いだ。長兄の大須賀忠政が外祖父・大須賀康高の養子として大須賀家へ出されており、次兄の忠長は早世していたからだ。

 慶長19年(1614年)からの大坂の陣に参陣。冬の陣では佐竹義宣隊の窮地を救い、翌年の夏の陣にも参陣した。武門の家らしく、戦闘ではかすり傷ひとつ負わなかったが、大坂から引き上げた先の京都で、以前から患っていた腫れ物のため、なんと26歳の若さで死亡してしまったのだ。戦闘が終了してからわずか20日後のことだったと言われている。

 江戸・寛永年間に発行された大阪の陣の軍記物「難波戦記」などによると、激戦だった天王寺・岡山の戦いの最中に痔が破け、大量出血。鞍壷に血が溜まった状態となったが、戦闘中のため治癒できなかったのが原因だ。

 康勝がいつから痔を患っていたかの記録はない。だが戦国武将といえば馬に乗って戦うのが商売で、いわば職業病で命を落としたことになる。

 康勝の「痔・エンド」は、思わぬ騒動も生んだ。彼には幼いながら庶子・平十郎(勝政)がいたが、中根吉衛門ら3家老が、幼君では武功を立てられないと判断し、家康に対して「後継ぎはいない」と回答。そのため、康勝の兄・大須賀忠政の子の大須賀忠次が榊原家に復帰し、相続をすることになった。

 だがこれにより、大名・大須賀家は絶家となっている。たかだか痔と、ゆめゆめ笑ってはいられない話なのだ。

(道嶋慶)

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