10月7日、高知競馬。第8回、第5日。先に高知県競馬組合、総務企画課広報班の高橋拓也さんに挨拶してから、すぐに馬券を買い始める。4Rに間に合った。締め切り5分前。時間がないので人気をチェックし、マークシートを赤ペンで塗りつぶした。
4Rは3歳以上牝馬の準重賞、ミラク特別、1400メートル、右回り、フルゲート12頭立てだ。1番人気⑦ジョウショーリード、2番人気は⑥サノハニー。1着・2着⑥⑦、3着3番人気③ラヴィンホールと4番人気⑨ミニョンのフォーメーション馬券を買う。結果は⑦⑨⑥で、3連単3380円。1着⑥⑦、2着・3着③⑥⑦⑨に広げておけばゲットできた馬券だった。
高知競馬は事前のチェックでは1番人気、2番人気の馬が連に絡むケースが多いことは前回、書いた。穴馬を探してのホームランより、人気に逆らわず単打を重ねる。それが結論だ。4Rは狙いがややズレたが、この作戦は間違いではなかった。
馬場は右回り、1周1100メートル、4コーナーからゴールまでの直線は200メートルと短めだ。この日は11レース中、9Rと10Rが1600メートル、それ以外の9レースは1400メートルだった。距離が1000メートルから1800メートルとバリエーションがある船橋競馬より、高知競馬は持ち時計などをチェックしやすい。だが、そこからが難解だった。
5Rは思い切って①番人気②を頭に2番、3番人気の2着・3着、②①⑨と②⑨①の2点で勝負したら、②①⑧。3番人気の⑨は4着で、3連単は8100円の好配当。もう少しだった。
この日はとにかく人気薄の馬がゴール前で伸びた。5Rから8Rまで絡んだのは、8番人気の馬だった。9Rは1番人気も2番人気も着外どころか、それぞれブービー、どん尻というありえない展開になった。
最終は11Rだが、この日の最後と臨んだのは右回り、1600メートル、10頭立ての10R。1番人気は①アポロテネシーだ。知人から「高知は赤岡が有名」と聞いていたが、アポロは赤岡修次騎乗だ。持ち時計と戦歴も申し分なしで、馬券は迷いなく①からいく。2着、3着は広めに③④⑤⑥⑧のフォーメーション20点、各500円とした。
レースは4コーナーで①が楽に抜け出し、後方から追い込んだ⑥が2着。3着には先行した⑩が残って、3連単①⑥⑩、9610円で決着した。
馬場は内ラチ沿いが深いのか、馬は外を回ってゴールを目指す。良馬場のこの日は、馬場に使用している海砂がスタンド側に高く舞い上がった。その砂ぼこりを見上げながら、天を仰ぐ。実はこれが旅打ち初の全敗である。
高知競馬を甘く見過ぎていたかもしれない。土佐を舞台にした夏目雅子の主演映画「鬼龍院花子の生涯」では夏目が「なめたらいかんぜよ」と叫ぶ。あのセリフが耳の奥で流れた。
だが、高知はいい街だった。とにかく人が親切で、応対が丁寧なのだ。どうしてなのだろうか。会う人会う人が、あたりがソフトなのだ。
場内には1階に2つの売店兼飲食店がある。ならば五百蔵商店で「かつおめし」と豚汁といこう。さらに万延元年(1860年)に臨海丸で渡米した人がアイスクリームを食べた際、アイスクリンと言ったことから、今も土佐の名物になっているシャーベットのソフトクリーム、アイスクリン1個をペロリ。
車で引き上げ、ホテル近くの居酒屋でカツオの塩タタキ、刺身、お腹の部分を焼いたはらんぼを、亀泉、黒尊、さらに龍馬の酒・船中八策でパクパク、グビグビッとやって、土佐にやってきた目的の半分「カツオを食べる」を叶えることができた(写真)。高知のカツオはレベルが高いので、どこで食べてもうまい。それから1軒、バーに立ち寄ってバタンキューという土佐の夜になった。
翌日ははりまや橋まで歩き、山内容堂公の高知城を見ようと思ったら、満車で駐車場に入れない。そこで、城下で日曜に開かれる街路市を歩いた。長さ1キロ、お店の数は350軒という南国一のマルシェである。ここでレンコダイ、メジカという魚の新子、5本で100円の長茄子などを両手いっぱいに買い込んだ。
空港では鰹丼、鰹の心臓、ちちこの煮付け…。カツオはそれでも食い足りない。もう一度、出かけてみたい土佐の競馬だった。
(峯田淳/コラムニスト)