楽天・松井裕樹は「第二の井川」になってしまう――。そんな話が今、球界内を駆け巡っている。さる球界OBが言う。
「松井は海外FA権を行使してのメジャーリーグ挑戦を表明した。パワー系の左投手だし、条件次第では獲得に乗り出すチームは当然、あるだろう。でも、あの投手がダブる。心配だね」
それが2006年オフにヤンキースが大金を使って獲得(入札金額2600万ドル+年俸総額2000万ドル)した、阪神OBの井川慶氏だ。
エースとして阪神を2度のリーグ優勝に導いた好投手だったが、メジャーでプレーしたのは5年契約のうち、わずか2年。メジャー通算成績は2勝4敗、防御率6.66。3年目以降は一度もメジャーに昇格せず、2Aと3Aの行き来を余儀なくされた。ニューヨークの野球史には「Spectacular Failure(壮大なる失敗作)」として、汚名を残している。
井川氏は3Aでは2008年に14勝6敗、2009年には10勝8敗で、ヤンキースの3Aスクラントンの球団最多勝記録を保持しており、まったく実力不足だったわけではない。メジャーで通用しなかったのは、メジャー球にアジャストせず、決め球であるのチェンジアップの精度を欠いたためだ。現地で井川氏を取材したこともあるスポーツライターが、その投球内容を振り返る。
「チェンジアップが決まればいいが、よく球を操れず、浮いていた。あれでは打ち取れない、と思った」
翻って、松井も侍ジャパンでの投球内容を見る限り、メジャー球に苦戦し、本来の投球ができなかった。同じ左腕として、井川氏の二の舞になる危険性を孕んでいるのだ。
「若い頃から抑えで活躍しており、経験は豊富な投手。ある程度、我慢して起用してくれるチームなら、化ける可能性はあるが、今のチェンジアップでは通用しない」(前出・スポーツライター)
ラーズ・ヌートバーが所属するカージナルスが獲得に興味を示している、との情報もあるが、名門だけに、いいパフォーマンスを出せなければ風当たりは強まる。金銭面だけでなく、今後の成長を考えてチーム選びをした方が「第二の井川」回避の近道になりそうだ。
(阿部勝彦)