少し前に大きなニュースになった「小学校3年以下の子どもを留守番させたら虐待」。全国に悪名を轟かせた、埼玉県の留守番禁止条例だ。結局、条例は取り下げとなったが、実は子どもに波及する問題は、それだけではない。
埼玉県では2022年7月に、LGBT条例が施行されている。その基本計画に定めている目標のひとつに「令和7年度末までに性の多様性に関する理解増進の取組を実施した学校の割合100%」があるのだ。これには授業のみならず、外部講師の起用も検討されている。
性の多様性に関する理解増進の取り組み(以下、包括的性教育)は子どもの未来に関わる問題でもある。
まずは、性のマトリクス表を用いての授業だ。男女の性別を「からだの性」「こころの性」「好きになる性」「表現する性」の4つの軸に分類。例えば「体の性は男の子でも、ぬいぐるみが好きなら表現する性は女の子」となる。
性別の数は男女の2つだけでなく無限大、という理屈のもと、教育は行われる。そもそも最近の考え方として「男の子だから青が好き」「女の子だからピンクが好き」などという決めつけはいかがなものか、という流れのはず。それがなぜ「ぬいぐるみが好きなら女の子」のごとく、逆行しなければならないのか。
「男の子なのにぬいぐるみが好きなのはケシカラン!」という前時代的な思想から抜け出したと思ったら、今度は「男の子でもぬいぐるみが好きなら心は女の子で、トランスジェンダーかもしれない」となる。せっかくアップデートした考え方が覆ってしまいかねない。
2022年8月12日、日本財団が発表した「包括的性教育」推進を目指す提言書についても触れたい。
お題目は「子ども達が、性や妊娠に関する適切な知識を義務教育で学ぶ必要性を訴える」とあり、それ自体違和感はない。が、中学校学習指導要領では「妊娠の経過(性交)は取り扱わない」とする方向性に対し、真っ向から異を唱えている。
2023年1月には国連人権理事会から、包括的性教育を日本も導入するよう勧告を受けているが、日本政府はこれに対し、学習指導要領を理由に、NOと回答している。
国際基準のガイドラインのひとつであるユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、5歳から8歳を対象としたカリキュラムに、自慰行為が含まれている。海外では同性愛への理解増進の一環として、児童向けの性教育本で肛門性交にも触れられている。
前述した性のマトリクスだけでなく、私たちがまったく想像していないような授業が、保護者の知らない間に既に行われており、実施率100%を目指して今後も更に広がろうとしているのだ。
筆者としては、公教育にかかわるものであれば、全国で統一した基準のもとに実施するべきであり、13歳までは刑罰が与えられない観点からも、性行為を教えることには学習指導要領にもあるように、慎重になるべきと考えている。
LGBTへの理解を促す必要はあるだろうし、性加害についても子どもの頃からしっかりと理解を促す必要はあろうから、包括的性教育の全てを否定するつもりはない。
ただ、性の多様性という大義名分で、あまりにも一方的に進められていく状況には、疑念を感じざるをえないのだ。理解増進の名のもと、保護者のみならず、多方面の専門家を交えて、しっかりと精査を進めてほしい。
(群シュウ)