「科学的根拠がない」「差別発言だ」として、10月26日に謝罪と発言取り消しの答弁を行うことに――。
これは東京都台東区の区議会で、9月20日に松村智成区議が発した言葉に対するものだ。区内で進めようとしているLGBTの学校教育についての松村氏の発言は、次のようなものだった。
「性の多様性ばかりに重点を置き、男性や女性の特徴を軽視するような教育を行っては児童が混乱する」「偏向した教材や偏った指導があれば(児童たちを)同性愛へ誘導しかねない」
しかし筆者は、これは単に謝罪と撤回を求めるのではなく、どこが問題なのか教材も含めてしっかりと議論するべき問題だと考える。LGBT理解増進法の理念にある「学校での理解に家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得る」機会を奪う言論封殺だと思えるからだ。
この法律について、立憲民主党の辻元清美氏は「なぜ保護者の理解が必要なのか」、そしてLGBT推進派の活動家でもあるライター・松岡宗嗣氏は「子どもたちをさらに絶望へと追い詰める」などと発言しており、大人には理解させたくない、理解を促したいのは子どもであるように感じるのだ。だからこそ、子どもに対する偏ったLGBT教育がなされる前に、議論が必要なのである。
先の10月26日に予定される発言取り消しに対しては、インターネット上で謝罪と撤回を要求する署名と、謝罪しないことを求める署名の2つが存在する。これは別に数を競うものではなかろうが、10月21日時点での署名数は、「謝罪しない」に1万3327名、「謝罪と撤回を求める」に1万6337名。こうして多数の署名を集めるほどの「区議発言」問題をめぐっては、理解増進法の理念上、慎重な議論が望まれる。
さて、LGBTについての教育、これは包括的性教育とも呼ばれているが、「性のマトリクス表」というものを使用した説明がある。
これは単純に男女を性別に分けるものでなく、性を「からだの性」「こころの性」「好きになる性」「表現する性」という4つの軸に分類。例えば「体の性は女性でも、男っぽい服装が好きなら表現する性は男性。性別の数は男女の2つだけでなく無限大」との結論に帰着するものであった。
が、これを聞いていた大人たちは「う~ん」と唸る。大人でコレなのだから、子どもがこの話を聞けばどうなるかは、想像に難くないだろう。
筆者が知る限りでは、この性のマトリクス表は、子どもを対象とした包括的性教育にも含まれている。このような教育が、保護者の知らない間に進められているのが現状だ。
松村区議の発言は、単純に差別発言と流していいものか。教育の内容をしっかりと吟味し、何を取り入れて何を取り入れないかを考えねばならない。子ども達への性教育の問題は、保護者全体が関心を持って取り組むべき事案だろう。
(群シュウ)