日本大学と東京農業大学に続き、私学の雄たる早稲田大学にまで、薬物汚染は広がっていた。
早稲田大学相撲部に所属する男子学生(20歳)が、今年7月に福岡県内の知人から、大麻を含む植物片を譲り受けようとした大麻取締法違反の疑いで、福岡県警に逮捕された。11月14日には西東京市の東伏見キャンパスの寮に家宅捜索が入り、スマートフォンなどが押収されている。
日本大学はあれだけの大事件になってもなお、全アメフト部員への検査をしなかったが、早稲田大学は東伏見キャンパスを利用する学生全員に薬物検査をするのか、対応が注目される。
といっても、大学生に薬物が蔓延するのも無理はない。親が知らないだけで「大麻成分を含んだグミ」は「ドン・キホーテ」などの量販店や雑貨店で簡単に買えるからだ。8月に「医薬品医療機器等法」で大麻成分の一部が規制される前は、「ヨドバシカメラ」の通販サイトでも取り扱われていた。
大麻成分のひとつで、大麻草の葉から抽出したTHC(テトラヒドロカンナビノールは)は、マリファナの材料。覚醒作用に加えて幻覚や知能低下、統合失調症などをきたす違法成分に指定されている。
一方、大麻草の茎や種子から抽出したCBD(カンナビジオール)には鎮静作用があり、大麻取締法上の「大麻」に該当しないとして、厚労省の麻薬取締部(通称マトリ)の取締り対象外となっている。このため「CBD」を用いたオイルやリキッド、グミ、タバコは健康食品として前記の通り、販売されている。
大麻が怖いのは、違法薬物THCとCBDが混在して市中に流通していることにある。
CBD入り商品をマトリや消費生活センターが抜き打ち検査すると、かなりの確率でTHCや合成麻薬成分が混入している。違法成分が検出された商品については販売店が直ちに回収し、取り扱いを中止するが、検査と取締りが追いついていないのが現状だ。
つまり高校や大学、塾やアルバイト先で友人知人から「安全な大麻グミ」「合法タバコ」と勧められて、その製品にTHCが含まれていれば、本人に自覚がないまま「大麻中毒」「薬物中毒」になる。
記者が驚いたのは、図鑑や参考書でもお馴染みの「学研の介護医療情報サイト」で、このCBDを「リラックス・リフレッシュ効果がある」「ストレス解消」「不安軽減」などと推していたことだった。
幼い頃から「この図鑑を読めば頭がよくなる」と親から刷り込まれ、夏休みの自由研究でもお世話になっている学研のコンテンツで「大麻成分推し」はちょっと違う。小学生から大学生まで「CBD入りグミ」なら食べても大丈夫と、大麻に手を出すハードルが一気に下がりはしないか。
ちなみに神経細胞が未熟な子供が「CBD入りグミ」と思って混入したTHCを摂取すると、意識消失のほかに記憶障害、精神遅滞、知能の低下をもたらす。一度破壊された子供の脳は、元に戻らない。
学研に問い合わせたところ、サイトの運営会社から以下のような返事が届いた。
〈ご指摘を頂きましたCBD関連の記事ですが、只今世間で話題となっている大麻グミとは異なり、成分は合法であり、世間を騒がせたものとは全く違うものを紹介するものですが、誤解を招かないよう扱いを停止致しました〉
現在は「大麻成分推し」記事は閲覧できないようになっている。
いっそ医療用麻薬を除き、全ての「大麻成分」の販売を禁止すればいいと思うが。悪政者と悪徳医師、悪徳薬剤師はアヘン戦争直前の清王朝末期のように、増税に文句をたれる日本国民をヤク漬けにして滅ぼすつもりなのか。
(那須優子/医療ジャーナリスト)