一度ならず、こうもケチがつけばもはや転落するのみ。鈴木氏の舌鋒は鋭い。
「次に生活感覚ですが、世間が夏休みの時、食事の買いだめで高級デパ地下に行ったでしょう。そこに上級国民ぶりが表れています。庶民はすべてが値上がりして、スーパーでの1円や2円の値上げにも困っているのにですよ。そして危機管理もなっていない。息子を秘書官にした時も、現在の松野官房長官の問題にしても、キチンと説明をしていないし、させてもいない。それを諫言する側近もいないどころか、最側近の木原誠二さん自身が『文春砲』を食らってしまう始末ですから。安倍さんの時は菅さんという女房役がいたのと好対照です」
10月23日の臨時国会冒頭での所信表明演説で「経済」を3連呼したものの、具体的な経済政策に乏しく、まったく芳しい評価が上がっていない。このことも致命傷につながっている。経済ジャーナリストの森永卓郎氏からも、ダメ出しのオンパレードが続く。
「自民党の積極財政を推進する議員連盟が責任をもって消費税の引き下げを行うよう提言しましたが、これを無視し、さらには経済対策として効果が遅くて薄い所得税、住民税の減税を選択しましたよね。それから防衛力の増強で効果のない防衛費倍増を選択し、とどのつまりは少子化対策でも、異次元とか言いながら効果のない少子化対策を打ち出すなど、いずれもピントがズレたものばかりです」
森永氏と言えば、いかに財務官僚が日本をダメにしているかを突いた「ザイム真理教」がベストセラー化しているが、この点での評価も当然厳しくなる。
「私は安倍政権が好きではありませんでしたが、それでも財務省の政治支配を封じ込めていたことだけは評価できる。ところが岸田政権ではその復権を許し、財務省に言われるがままに増税などでの国民負担増を強いて、さらには社会保障給付のカットを進めています。それ以外でも、失敗が確実な半導体支援に巨費を注ぎ込んだり、収益性が望めない宇宙開発事業の支援を決めるなどムダばかり。かと思えば、原発再稼働に舵を切ってこれまでの方針を覆すなど、もはや見ていられません」
鈴木氏にも具体的な問題点を挙げてもらったところ、
「ダメダメ政策で思いついたところを挙げれば、1つは広島サミットです。岸田さんの地元広島での開催で、相当力を込めたつもりなのでしょうが、実際行ったことと言えば、安全保障の担保となっている核兵器の抑止力のバランスについては現実的な言及をしないまま、綺麗ごとで核廃絶を謳っているだけ。かえって2枚舌ぶりが目立ちました」
さらには今年6月の「LGBT理解増進法」にも言及する。
「一見すると実績かのように見えますが、中身は現実味のない、差別はやめましょうと当たり前のことを言っているだけ。例えば性別の変更は性適合手術を受けないと認められないということになっている住民登録の法的な問題などは放置されたまま。旧統一教会への解散命令だって、セットで行われるべき財産処分の問題が抜け落ちたまま。全部が全部、表向きの口あたりのいい話ばかりで、見かけ倒れなものばかりですよね」
聞けば聞くほど、気持ちがゲンナリしてくるのが岸田ビジョンというものだろう。