世界の各地には、訪れた者を不思議な現象で出迎えてくれる、いわゆる心霊スポットがいくつも存在する。だが幽霊が出るというより、出るのが当たり前で出ないはずがない、といわれる場所がある。それが、チェコの首都プラハから東へおよそ70キロ離れた町、クトナー・ホラにある「セドレツ納骨堂」だ。まずは旅行ジャーナリストの解説を聞こう。
「ここはプラハから鉄道で1時間、人口約2万人の町です。中世に銀が発見されて以降、13世紀から15世紀には非常に栄えたものの、銀の枯渇と戦争、さらにペストの流行により多くの命が失われた、哀しい歴史のある場所としても知られています」
ところがそんな静かな町の一角に、世界から怖いもの見たさで訪れる観光客が絶えないのが、くだんのセドレツ納骨堂なのである。世界の心霊スポットに詳しい研究家が語る。
「この納骨堂には教会とその地下を含め、約4万人が眠っているとされますが、何がすごいって、うち約1万人分の人骨で、礼拝堂内の装飾をしているんです」
伝承によれば、1278年にセドレツ修道院の院長がイスラエルのエルサレムに使節として派遣された。そして帰還する際、イエス・キリストが磔刑に処されたゴルゴタの丘から持ち帰ったひと握りの土を、墓地に撒いた。
するとその話が中央ヨーロッパ中に知られることとなり、神聖な墓地としてポーランドやドイツ・バイエルンなどから埋葬希望者が殺到。さらに14世紀のペスト大流行、15世紀のフス戦争で多くの犠牲者が弔われることになり、徐々に敷地を拡大していった。
「その後、19世紀に教会を購入したシュヴァルツェンベルク侯家により、人骨を用いたこの世の物とは思えない納骨堂に生まれ変わったといわれています。納骨堂内部には骸骨のシャンデリアやピラミッド、十字架など、骨で作られた様々なモチーフがあり、文字通り『骸骨教会』そのものです」(前出・心霊スポット研究家)
セドレツ納骨堂の入場料は90チェココルナ(日本円で約580円)で、年間50万人を超える観光客が訪れるという。先の旅行ジャーナリストが言う。
「堂内に入った途端、一瞬で空気が変わりますからね。なにせ4万体の遺骨、しかもこの世に未練を残して旅立った人ばかりですから、霊感の強い人は間違いなく霊の声を聞いたり目撃したりして、その存在を感じるはずです」
「ゴルゴタ」はアラム語で「しゃれこうべ」を意味するそうだ。さて、1万の「しゃれこうべ」が語りかけているものとは…。
(ジョン・ドゥ)