2023年10月、沖縄本島沿岸で新種のヒメイカ2種類が発見され、うち1種類の特徴が沖縄地方に伝わる精霊「キジムナー」を連想させる「体が小さく赤色」だったことから「Idiosepius kijimuna(和名:リュウキュウヒメイカ)」と命名されたことが、地元紙などで報じられた。
沖縄では町のあちらこちらでよく目にする可愛いキャラクターのキジムナーは、沖縄諸島周辺で伝承される伝説上のUMAで、一般的にはガジュマルの古木で暮らす精霊だと言われている。UMA研究家が語る。
「特徴については諸説あるものの、その多くが赤い髪で、背丈は人間の子供程度。UMAでありながら、とても人懐っこい性格で、すぐに誰とでも仲良くなります。家に遊びに来たり、一緒に魚釣りに行ったりするのだとか。特殊な能力を持っているため、漁師が一緒に海に出れば、大量に魚が獲れる。毎日のようにキジムナーを船に乗せて漁に出かけ、ついには大金持ちになった漁師もいる、との伝説も残されています」
一見、人間には危害を加えないと思われるキジムナーも、突如として態度を豹変させ、人間に刃を向けることがあるという。人間が不用意に、あるいは故意に彼らの住処である古木を切ってしまったり、虐げたりしてしまった場合である。前出のUMA研究家が「怒りの現場」について解説する。
「ひとたび怒りを買ってしまったら最後、家畜を皆殺しにしたり、人間を家に閉じ込めて火を放ったり、沖合で船を沈めて溺死させたりと、手がつけられない状態になると言われています。しかも、人間がどこへ逃げても追いかけ、命を落とすまで徹底的に攻撃し続ける。キャラクターに描かれている可愛い姿とは正反対に、一度スイッチが入ってしまえば、とてつもなく恐ろしい妖怪へと変身してしまうわけです」
沖縄では今でも不吉な出来事が起これば「キジムナーに襲われた」「キジムナーの祟りだ」といった言葉が飛び交うほど、その存在は恐れられているという。「気のいい精霊」と「恐ろしい妖怪」という2つの顔を持ったUMA、それがキジムナーなのである。
(ジョン・ドゥ)