サッカーアジア杯は、開催国カタールが決勝でヨルダンを3-1で破り、史上5カ国目の連覇を飾って大会を終えた。
総括すると、中東勢の躍進が目立つといわれているが、本当にそうだろうか。確かにベスト4に3チーム(カタール、ヨルダン、イラン)が進出した。開催国のカタール、FIFAランキングでアジア2位のイランが勝ち上がっただけで、そんなに不思議なことではない。
結局、日本がイラン、イラクに敗れ、伏兵のヨルダンが決勝に勝ち進んだことで「中東勢の躍進」という言い方をしたのだろう。アジアのサッカーはそんなに大きく変わってはいない。
ただ、東アジアに比べて、中東に勢いがあるのは事実だ。カタールでW杯が開催されたこともあるが、今回のアジア杯は元々、中国で開催される予定だった。それが「ゼロコロナ政策」を理由に、中国が辞退。その代替えとして立候補したのがカタール、韓国、インドネシア、オーストラリアだった。その中から、AFCはカタールを選んだ。
しかも次回2027年の大会はサウジアラビア開催が決まっており、前回のUAE大会を含め、3大会連続で中東で開催される。それどころか、今年4月に開幕する、パリ五輪アジア最終予選を兼ねているU-23アジア選手権もカタールで開催され、その次の2026年の大会も、サウジアラビアでの開催が決まっている。
そのサウジアラビアは2034年のW杯開催国に立候補しており、今年中に決定する予定だ。つまり東アジア勢は、中東のオイルマネーに全く対抗できていない。カタール、サウジアラビアに加え、近隣諸国の中東勢も勢いを増している。
W杯の出場枠が次回の北中米W杯から、48カ国に増えたのも大きい。アジア枠が8.5と正式に発表されたのは2022年だが、48カ国と決めたのは2017年で、その段階でアジア枠が8.5になる可能性を示唆していた。
つまり、アジアの第2勢力と言われる国々は、2026年の北中米W杯ならW杯出場のチャンスがあると考えて、強化を開始してもおかしくはない。現にカタールW杯アジア2次予選で日本に敗れたタジキスタンの監督が「我々はカタールの次の大会を目指している」と発言している。
では、アジアの第2勢力とはどこか。UAE、イラクはもちろんのこと、今回決勝に進出したヨルダンをはじめ、バーレーン、オマーン、シリアといった中東勢に、最終予選の常連ウズベキスタン、さらに今大会最大のサプライズだったタジキスタンあたりか。
これらの国は8.5枠の残り2枠を狙う立場で、日本と対戦する時は勝ち点1でいいからと、今まで以上に必死に得点を奪いに来る。簡単には勝たせてくれない。
一方の日本はどうか。W杯参加国が48に増えた段階で、「W杯は出場して当たり前」「アジア予選はもうハラハラドキドキしない」という声が増えた。そうした空気は選手にも伝染する。それが今回のアジア杯での結果に繋がったのかもしれない。完全にアジアを甘くみていた。
最終予選は完全ホーム&アウェーの長期決戦。アジア杯のようにセントラル方式の短期決戦ではないだけに、日本がW杯出場を逃すことは考えられない。ただ、楽勝で出場権を得るほど、最終予選は甘くない。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。