千載一遇のチャンスを逃してしまうのか。メッツ・藤浪晋太郎の「不運」ぶりがクローズアップされている。
藤浪は今季、メジャーリーグでのプレーを希望する日本人選手の中で最後に所属先が決まり、開幕戦に向けてキャンプ地のフロリダ州ポートーセントルーシーで調整を重ねていた。ところが今回、家庭の事情とビザ取得の関係で、一時帰国する。
帰国は短期間であり、開幕まではまだ1カ月以上はある。時間的には問題がないとの声もあるが、現状は甘くないのが実情だ。
どのチームも、本格的にオープン戦が始まっている。実績のある投手ならある程度、自らのペースでの調整は可能だが、メジャー2年目の藤浪はそんな立場にはない。しかも、今季も1年契約とあって、オープン戦から存在感をアピールしてシーズンに突入し、そのまま来季以降の複数年契約を勝ち取るのが、ベターな選択だ。メジャーリーグを取材するスポーツライターはこう話す。
「ボールの力強さなどは昨シーズンで実証済みながら、問題のコントロール難、突然崩れる悪癖がどこまで修正されているか、首脳陣としては早い段階から見たかった。本人はオープン戦の登板が数試合遅くなる程度、と考えているかもしれませんが、開幕が迫るにつれて、登板は主力が中心になる。藤浪に与えられるチャンスは当然、少なくなります」
それだけではない。今やメッツのエース格として期待される千賀滉大が右肩痛のため、開幕時は負傷者リスト入りすることが濃厚で、先発枠がひとつ空く可能性がある。現在も先発にこだわり続けている藤浪にとっては、アピール次第ではその枠に飛び込むチャンスが生まれはずだった。
オープン戦でいきなり好投するようなことがあれば、千賀が復帰してからもローテの一角に居座るケースはあるだろう。それだけに、数日間の遅れは命取りになるかもしれないのだ。前出のスポーツライターも、
「先発で投げたい藤浪にとっては今回が、今季に限っては最初で最後のチャンスだったかもしれないのに。昨年同様、シーズンに入ってから中継ぎや敗戦処理でコツコツ実績を積むしかないかもしれない。そうなると、またオフに契約問題が勃発…というパターンです。今回の帰国は本人を含め、誰が悪いわけではないだけに、気の毒な面はありますが」
藤浪がアメリカン・ドリームを勝ち取ることを願っているファンは多い。腐らず突き進んでほしいものである。
(阿部勝彦)