弥生賞ディープインパクト記念とチューリップ賞が終わり、クラシックの蹄音が一段とかまびすしくなってきた。そして今週の日曜日には阪神で桜花賞トライアルのフィリーズレビューが行われ、いよいよ春本番が近いことを告げてくれるだけに、競馬を生業にしている者にとっては、より力が入る時期でもある。
そうした中、土曜日に行われる中山のメインは、古馬によるハンデ重賞・中山牝馬ステークスだ。
6歳以上の牝馬は繁殖時期を迎えていることもあり、この重賞で現役を最後とする馬も少なくないが、今年も頭数はそろい、恐らくフルゲート(16頭)になるのではなかろうか。
牝馬同士によるハンデ戦。しかも例年、頭数がそろうことから人気どおり順当に収まることは少なく、よく荒れる重賞というのも特徴のひとつだ。それは過去のデータが示している。
03年に馬単が導入されて以降、これまでの21年間、その馬単による万馬券は10回(馬連は7回)。俗に言われる〝ハネ万〟(連勝で10万円の配当)も1回ある。この間、1番人気馬は3勝(2着2回)、2番人気馬は1勝(2着3回)のみで、1、2番人気馬によるワンツー決着は1回もない。
つまり、まともに収まることがほとんどなく、まさに一筋縄では収まらない重賞なのだ。
年齢的には5歳馬がよく連対を果たしており、過去21年間で11勝(2着7回)を挙げている。これに続くのが4歳馬の5勝(2着8回)、そして6歳馬の4勝(2着6回)という具合だ。ただし、5歳馬は他の世代に比べて出走頭数が多いことも確かで、年齢だけにとらわれることなく、近走の成績や状態のよしあしをしっかりと見極めることが肝心である。
いずれにしても難解な重賞なのだが、それだけに穴党としては気合いが入る。当方が最も期待を寄せてみたいのは、ルージュリナージュだ。
前走の東京新聞杯は、やや後手を踏んだ上に直線での仕掛けも遅れて、リズムに乗りきれないまま8着に敗れた。それでも勝ち馬とはコンマ6秒差しかなく、改めて注目したい。
オープンに上がっての近2戦の重賞は不本意な競馬が続いているが、決して力負けではない。しかも今回は〈3 1 0 2〉と最も得意にしている1800メートル戦で、テンに速い馬がそろっているだけに、よどみのない流れになるはずだ。
であれば小回りコースの中山でも、持ち味である強烈な末脚を存分に発揮できていい。
血統的にはトゥザヴィクトリー(エリザベス女王杯)など近親、一族に活躍馬が多くいる血筋。ハンデは恐らく前走よりマイナス2キロの53キロ。やや重までなら十分勝ち負けになるはずだ。
一方、中京で行われる金鯱賞は、エアサージュが狙いだ。
3勝クラスを勝ち上がったばかりで荷が重いとみられて当然だが、ここにきての地力強化ぶりには目をみはるものがある。その素質のよさに期待したい。
「ひ弱さが消えて、使い減りしなくなった。充実ぶりが目覚ましく、強敵相手にどこまでやれるか楽しみ」
とは、池添調教師をはじめ、厩舎関係者が口をそろえるところ。
決め手に欠ける面はあるものの、相手なりに走る勝負強さを持ち合わせているのが強みでもある。
こちらはシングスピール(ジャパンカップなどGⅠ4勝)をはじめ近親、一族にGⅠ勝ち馬が実に多くいる血統馬。走りっぷりから道悪の不安もなく〝一発〟十分とみた。