全米を揺るがす、大谷翔平を巻き込んだ違法賭博スキャンダル。大谷は事情説明の記者会見冒頭で、元通訳の水原一平氏を「信頼していた方」と過去形で呼んだかと思えば「彼」「一平さん」と、呼び方が二転三転した。それほど大谷選手本人もまだ、動揺を引きずっているのだろう。特に衝撃的だったのが、以下のくだりだ。
「まずはじめに言うと先週末、韓国でですね、僕の代理人に対してメディアの方から、私(大谷自身)が違法なブックメーカーに関与しているのではないかと、スポーツ賭博に関与しているのではないかと連絡がありました。
一平さんは僕にこういった取材の依頼があるということを、まず僕に話していなかったし、僕の方にそういう連絡が来ていなかったということと、はじめに代理人には、一平さんは僕と話して分かったのは、一平さんにではなく、友人の借金の肩代わりとして支払ったというふうに、僕の代理人含め、皆に話していました。
その翌日に、さらに尋問で、一平さんは代理人に対して、借金は自分のもの、つまり一平さん自身が作ったものだと説明しました。それを僕が肩代わりしたという話を、その時に代理人に話したということです。
そして、これらがまったく全てが嘘だったということです。一平さんは取材依頼のことも僕にはもちろん、その時に伝えていなかったですし、代理人の人たちに対しても僕はすでに彼と話して、コミュニケーションを取っていたと嘘をついていました」
大谷選手の口座に水原元通訳がどうやってアクセスし、6億円以上もの大金を送金できたのか。大谷選手本人が肝心のところに踏み込んだ説明をしなかったため、最大の謎は残されたままだ。
それでも解雇される直前の水原氏が大谷選手の代理人に「すぐバレるウソをつく」ほど言動が異常だったことだけは、会見から伺えた。
そこで電撃解雇後に行方不明の水原氏の潜伏先として考えられるのが「ギャンブル依存症患者の矯正施設」だ。
水原氏はスポーツ専門チャンネルESPNの取材に「借金の取り立てに身の危険を感じた」と話している。取り立てやパパラッチから身を隠せる場所として最適なのは、24時間監視がつく「依存症患者の矯正施設」だろう。
ギャンブル中毒においてはまず、金を賭けることで脳が興奮する状態を落ち着かせるために、携帯電話を取り上げて個室に収容。重症の場合は脳が萎縮していることもあり、脳萎縮や他の病気が隠れていないか、検査や診察を受ける。
賭け事ができないために抑うつ状態に陥る患者もいて、その場合はうつ患者と同様の対症療法を受けることになる。施設退所後は本人に大金もクレジットカードも持たせず、周囲が金銭管理をした上で、カウンセリングや患者同士による集団認知行動療法を続けていく必要がある。
水原氏の生まれ故郷の北海道には、人目をしのんで療養するにはうってつけの矯正施設が10以上あるし、米カリフォルニア州にも土地柄、矯正施設が多い。ハリウッド俳優やセレブが入所するアルコール中毒、薬物中毒矯正施設から、シリコンバレーで働いている間に依存症になった技術者向けの矯正施設、少年院附属の施設まで、様々だ。
捜査当局としても、水原氏が思い詰めて逃亡もしくは自傷する自体は避けたいし、水原氏が窃盗や賭博の罪を問われることになっても「矯正施設で加療中」で情状酌量されれば、減刑もしくは懲役刑は免れる(むしろ更生施設の方が、懲役刑よりキツいと言われる)。
「矯正施設への潜伏説」を推す理由はただひとつ。水原氏には解雇前日までソウル高尺ドームで大谷夫人の真美子さんと談笑していた愛妻と、ロス在住の両親のために、依存症から更生する義務があるからだ。
(那須優子)