自民党派閥の裏金事件をめぐり、自民党を離党した世耕弘成前参院幹事長は、我が世の春を謳歌してきた時から一転して、窮地に追い込まれている。劣勢を挽回するために取り沙汰されているのが、衆院への鞍替えである。
次期衆院選で衆院和歌山2区には、自民党からは同じく事件の責任を取る形で引退を表明した二階俊博元幹事長の三男が出馬する見込みで、「二階VS世耕の最終戦争」が行われるかもしれないのだ。
世耕氏自身は自らの去就について、
「一日一日、議員活動を懸命に務めていく。そのことに尽きると思っています」
と述べるにとどまった。だが周辺からは、
「このまま参院にいても、台頭してきている石井準一参院国対委員長の下につかないといけなくなり、先の展望がない。衆院に鞍替えして勝負に出るべき」
との声が出ている。
もともと世耕氏は、念願とする総理大臣に就任するため、林芳正官房長官同様に、衆院への転出を狙うタイミングを図ってきた。裏金事件で離党という挫折を味わったが、地元の世耕支持議員は、こう言い切る。
「災い転じて福となす。二階さん本人ならともかく、三男なら無所属でも勝機はある」
これに対し、自民党選対関係者は、
「さすがの世耕さんでも、党公認候補に勝つのは難しい。無所属同士で勝った候補を追加公認とすると党側が決めたら勝てるかもしれないが、今の岸田文雄総理の下では難しいでしょう」
世耕氏は昨年10月の参院本会議で、岸田総理に向かって、
「決断と言葉について、いくばくかの弱さを感じざるをえない」
と、与党幹部としては異例の批判を行った。今、その言葉はそっくりそのまま、自身に跳ね返ってきている。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)