日本国内でも感染が相次いでいる「はしか(麻疹)」。4月上旬時点での患者数は全国で21人ながら、すでに昨年1年間の28人に迫る勢いのハイペースで確認されている。
現在の感染者は、海外からの帰国者や旅行者などの「持ち込み」が原因と指摘されている。GWに人の移動が多くなることで、さらなる感染拡大や蔓延が懸念されている。
「はしか」は「麻しんウイルス」によって発症する感染症。湿疹を発症して、高熱、咳、鼻水など風邪のような症状が出る。悪化すれば、肺炎や中耳炎、脳炎など重篤な合併症を起こす危険もある。空気感染や飛沫感染、接触感染などで広まるが、ウイルスの直径は1ミリの100万分の1ほどで、マスクでの予防も困難と言われる。
特別な治療法は存在せず、対症療法が中心になる。解熱剤や鎮痛剤、点滴などにより自然治癒を待つしかない。
唯一の予防法がワクチンだ。06年より1歳と小学校入学前年度の2回のワクチン接種が実施されるようになった。その結果、日本土着の麻しんウイルスに関して、15年にはWHO(世界保健機関)から「排除状態」にあると認定された。
現時点で感染が爆発的に広まっていない理由は、前述した幼少期での2回のワクチン接種の導入が一つ。もう一つは、ワクチン接種をしていない50代以上の世代でも、過去の流行時に感染したことで免疫を持つ人が多いからだと指摘されている。
しかし、50代以上の人すべてが過去に「はしか」に感染しているわけではないので常に感染の危険性はあるのだ。
過去に「はしか」に感染したかどうか、記憶があいまいな場合は、抗体検査で確認しておくことをオススメする。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。