台湾の新総統に就任した頼清徳氏が、前政権を継承する「現状維持=中国を警戒」の姿勢を打ち出した。「台湾を併合しようという中国のたくらみは消えない、ということを理解すべきだ」として、防衛力の強化に取り組む意向である。
そんな新総統の台湾での就任式に、日本の国会議員およそ30人が出席したことに、中国の呉江浩駐日大使が反応。
「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」
つまり、日本が「台湾独立」や「中国分裂」に加担すればとんでもないことになると、脅しともとれる発言を展開したのだ。呉大使は日本政府から抗議を受けることなった。
この脅し発言は、5月20日に都内の在日中国大使館で開かれた、台湾問題と日中関係について意見交換する座談会で飛び出したものだ。ところが中国メディアが公表した出席者の写真を見ると、日本政府関係者の言う「オワコンばかり」であることが明らかになった。
呉大使の両隣には鳩山由紀夫元総理と社民党の福島瑞穂党首が座った。向かい側には、元外務省国際情報局長の孫崎享氏、元経産官僚でかつて「報道ステーション」に出演した際に突然「I am not ABE」と書かれたフリップを掲げた古賀茂明氏。さらには安倍晋三元総理について「同じ価値観を持っている」などとラジオ番組で発言した松任谷由実に対し、「荒井由美のまま夭逝すべきだったね」とフェイスブックに書き込んで謝罪に追い込まれた京都精華大学の白井聡准教授らが並ぶ。
古賀氏は最近、自身のXに、日本のメディアについて〈新聞とTVの政治報道には要注意。私が付き合ってきた海外の記者に比べて日本の政治部記者の質は異常に低い〉などと威勢よく書いているが、呉大使発言には沈黙したままだ。
白井氏も安倍元総理の語録かるたを揶揄して〈私も一つ。『あ』安倍さんからじゃけえ(河井克行)〉と書き込んだが、古賀氏同様に、呉大使発言には言及していない。
彼らは呉大使発言に面と向かって抗議し、その事実を公表すべきではなかったか。安倍批判では元気になる面々だが、相手が中国大使となると、おとなしくなってしまった。
官邸関係者は、
「こんな人たちしか呼べない中国大使館は、恥ずかしくないのか」
と、中国の影響力工作を疑問視するのだった。
(喜多長夫/ジャーナリスト)