「ヴィクトリアマイル」のテンハッピーローズ、そして「日本ダービー」のダノンデサイルと、大穴馬の激走で盛り上がった東京競馬場の上半期GⅠシリーズも、6月2日の「安田記念」でラストを迎える。
頂点の日本ダービーで、予想熱量やつぎ込む資金もピークを迎えるからか、例年、集中力を欠いた状態で安田記念に挑んでいるファンは少なくない。そのため「安田記念は苦手」と、つぶやく輩も結構いるのだ。競馬ライターが話す。
「我々の周囲にも、安田記念が大得意という人はいない印象ですね。やはり、オークスと日本ダービーという3歳馬の祭典の後というメンタルの部分は大きいと思いますが、3歳馬と古馬、さらに牡馬も牝馬も入り乱れて、そしてどのタイプが馬券に絡んでもおかしくないという設定が、『予想に確固たる自信が持てない』と苦手意識を助長している可能性はあります」
とはいえ、この安田記念。冷静に見れば、過去10年で3連単が10万円以上ついたのは、たったの3回。1番人気は7回馬券圏内(3着以内)に来ているし、1番人気が凡走した年も必ず3番人気までの馬が1頭は馬券になっている。つまり、けっこう「堅め」なのだ。
もちろん、それだけでは馬券は絞り込めないが、前出の競馬ライターは「実は安田記念は得意なんです」と豪語しているのだ。
「ぜひ、ここ数年の安田記念のレースを見返してください。まるで、どの年のレースも同じに見えますよ。芝コースは日本ダービーの週から仮柵が外側に作られたCコースを使用しますが、スローペースになって内枠の先行馬がまだ有利に運べるダービーとは違う。ペースが緩まないマイル戦の安田記念は、Cコースの恩恵を受けて、4コーナーで中段より後ろにいた差し馬が、コースの真ん中から少し外側の芝がびっしり生えた部分を通ってきて、ゴール前できっちり届きます。そんな光景が毎年、同じように繰り広げられているんです」
確かに、ここ3年だけを見返しても、どれがどの年がわからなくなるほど「同じ」だ。さらに同じなのはレース内容だけではなかった。前出の競馬ライターが続ける。
「差してくるのはほとんどの場合、オレンジ帽子ですよね。そう、7枠の馬なんです。偶然と言われるかもしれませんが、最近10年のうち7年で7枠が馬券に絡んでいるのは、必然だと思います。大外の8枠ほど思い切って逃げたり、最後方に下げたりという、大胆な競馬をしなくていい枠で、内側の人気馬を見ながら、他馬から不利も受けず、うまいタイミングで追い出させるのがちょうど7枠だと考えられます」
事実、2017年7番人気で4角15番手から追い込んで5着まですべてクビ差の接戦を制したサトノアラジンは7枠14番、21年8番人気で4角8番手から1番人気のグランアレグリアをアタマ差でかわしたダノンキングリーは7枠11番、翌22年にも4角10番手から進出した4番人気のソングラインが見事にレースを制している。
安田記念の苦手意識を克服するには、あれこれ難しい予想はせず、人気の有無にかかわらず、まず7枠の馬を買ってみる。そんな「治療法」がいいかもしれない。
(宮村仁)