テリー で、すぐに弟子入りするんですか。
晴の輔 弟子入りは大学を卒業してからですね。せっかく親が高い学費を出してくれたのに卒業しないと悪いと思いまして。卒業するまで師匠の独演会に毎月通って、気持ちが変わらなければ本物、その間に気が変われば自分の気持ちは所詮その程度と思うようにしてたんですけど、4年間で1ミリも気持ちが変わりませんでしたので。
テリー どうやって弟子入りしたんですか。
晴の輔 師匠が出てくるのを自宅の前で待って、土下座しました。
テリー 家は何で知ってたんですか。
晴の輔 ネットもない時代ですから、4年かけて探しました。独演会で師匠の落語を聴いてると、時々ポロっと近所の地名を言うことがあるんですよ。そこから手探りで4年かけて。
テリー すごい、ちょっと怖いですね。
晴の輔 そうですね(笑)。
テリー 何時頃に土下座したんですか。
晴の輔 うちの師匠は文化放送で朝のラジオをやってまして、6時頃にハイヤーのお迎えが来るんです。それで履歴書を持って、師匠が出てきたら土下座しようと思ってたんですけど。で、ネタっぽくなっちゃうんですけど、玄関がガチャって開いたから「弟子にしてください」って土下座したら、小学2年生の息子さんだったんですよ。
テリー アハハハ。それ、絶対、面白くしようとしてますよね(笑)。
晴の輔 いや、テリーさん違うんですよ。ちゃんと理由があるんです。うちの師匠の教育で、「おはようございます、ご苦労さまです」って、息子さんが運転手さんにリポビタンDを渡すのが日課だったんですよ。それで息子さんが先に出てきたんです。
テリー ああ、そうなんだ。できた息子さんですね。
晴の輔 そうなんですよ。それで小学生に土下座しちゃって(笑)。で、その後で師匠が出てきて、もう1回土下座して、履歴書を渡して、そのままうちの師匠は文化放送に行きまして。
テリー さすがにその時すぐに弟子入りが許されるわけじゃないんですね。
晴の輔 そうですね。それで、その後はご自宅はご迷惑だろうと、文化放送の入口で毎朝「おはようございます、弟子にしてください」。放送が終わって出てきた時に、「お疲れさまです、弟子にしてください」っていうのを3日ぐらい続けて、それから事務所に呼ばれて面接していただきました。
テリー 一番弟子じゃないですか。師匠はそれまで弟子を取らなかった。
晴の輔 いえ、それまでに10人いたらしいんです。でも、やっぱりキツくて辞めていったんです。もちろん給料なんか出ません。交通費も出ないですから。
テリー じゃあ、別に弟子は取らないっていう方針だったわけじゃなくて。
晴の輔 そうですね。面接の時に「俺も談志に取ってもらって今があるから断る理由はない」って言われましたから。で、「そこらへんにいろ」って、いきなり車のキーを渡されて、初めて師匠を送って、事務所に戻って、車を駐車場に入れたんですけど、よく考えたらどこの馬の骨かわからない人に車のキーを預けるってすごいなと思って。
テリー ねぇ、だって高級車ですよね。
晴の輔 そうなんですよ。その車に乗ってどこかへ逃げちゃってもいいわけじゃないですか。だから、弟子入りも勇気がいりますけど、取る方も勇気がいるんだなっていうのは、後から感じましたね。
テリー ほんとですね。
晴の輔 それで運転手になって、そこから見習いっていう形ですね。
ゲスト:立川晴の輔(たてかわ・はれのすけ)1972年、兵庫県生まれ。大学時代は落語研究会に所属。卒業後の1997年、立川志の輔に一番弟子として入門し、「立川志の吉」を拝名。2003年、二ツ目に昇進、2013年真打昇進。志の吉から「晴の輔」に改名。古典落語をわかりやすく演じると定評があり、全国各地での落語会、ビジネス落語講演会、子ども落語会をはじめ、結婚式の司会など幅広く活動。2013年より「笑点 特大号」(BS 日テレ)の若手大喜利のメンバーに。2024年4月7日放送の「笑点」(日本テレビ)より大喜利の新メンバーに抜擢され、注目を集める。