1週前追い切りで破格の時計を出したことで、開催週の水曜は芝コースで併せ馬を敢行。それでもカルデア(3歳未勝利)を5馬身ほど追走して、手応えよくあっさりと並んでしまったドウデュースは、6月23日の「宝塚記念」で圧倒的1番人気が予想されている。
鞍上の武豊は会見で、ドウデュースにとって初出走となる京都競馬場については「阪神よりは京都の方がいいかなというイメージはありました」と、一部でささやかれていた不安を払拭するコメントを発した。
そして、ディープインパクトで制した2006年以来、18年ぶりとなる「淀の宝塚記念」の制覇を誓ったのだ。
聞けば聞くほど、ドウデュースで仕方がないムードの今回の宝塚だ。しかし、6月16日に配信した本サイトの記事では、京都初出走のドウデュースを過信する危険性を指摘した。今も「ドウデュース危うし」を力説する関西の馬券師ライターは、ほくそ笑む一方なのだ。
「武豊騎手のコメントはあくまでイメージでした。私には、本人が不安を感じていることが手に取るようにわかりましたね。とにかく、宝塚記念ほど過去の実績が役に立たない、魔物がうようよしている伝統の古馬GⅠレースはありません。オグリキャップ、メジロマックイーン、シンボリクリスエス、ゼンノロブロイ…すでにGⅠタイトルをいくつも獲っていた名馬たちが、人気を背負って敗れ去っていく光景を何度見てきたことか。ドウデュースに恨みはありませんが、京都初出走、実績ナンバーワン、圧倒的1番人気と、下剋上が起こる舞台は整っています」
この馬券師ライターが「ドウデュース1強ではない」と自信を深めるのは、宝塚記念には他の古馬GⅠにはない、独特の傾向があるからだという。
「それは、牝馬が圧倒的に強いことです。牡馬の古馬は、天皇賞(春)や安田記念、最近なら大阪杯で一旦ピークに仕上げます。ところが古馬牝馬は、中長距離のレースでそこまでピークに仕上げるレースがありません。最近は大阪杯が加わりはしましたが、少なくとも牡馬と違い、宝塚に出走する牝馬は上半期で最もいい状態の仕上げをしてくる可能性が高いんです。また、開催が6月後半で、夏に向けて気温と湿度が高くなりがちです。『夏は牝馬』という格言があるように、この開催時期が牝馬を後押しします」
過去の宝塚記念では、第46回(2005年)でゼンノロブロイを並ぶことなくかわした11番人気のスイープトウショウが強烈だった。近年はさらに牝馬の躍進が顕著だ。57回(2016年)はマリアライト、60回(2019年)はリスグラシュー、61回と62回はクロノジェネシスが連覇している。前出の馬券師ライターが高笑いする。
「宝塚で激走した牝馬の特徴は、ほとんどの馬が同じ距離の『エリザベス女王杯』を好走していること。GⅠタイトルの数より、2200メートルという特殊距離の経験値が重要なのでしょう。そしてなんと、今年の牝馬の出走はルージュエヴァイユ1頭です。しかも、昨年のエリザベス女王杯の2着馬。1番人気じゃないのが不思議なぐらいですよ」
戦前予想では、川田将雅騎乗のルージュエヴァイユの単勝人気は6~8番人気あたりと報道されている。ドウデュースの勝利を信じる馬券ファンからは「まさか、GⅠ未勝利のルージュなんかに負ける?」と笑いがもれそうだが、はたして結果は…。
(宮村仁)