先日、「ananweb」が配信した「角刈り姿が決まっている〝大人の男″といえば?」なる記事を目にした。カップヌードルのCMなどでおなじみの角刈り芸人「アタック西本」(ジェラードン)が独断で「ロマン溢れる角刈りな男」をピックアップしたものだが、彼曰く、和の魅力がたっぷりな菅原文太に対し、「ダンディズム溢れる洋風スタイル」なのが、松方弘樹なのだとか。なるほど、そう言われてみると、そんな気もする。
さて、松方といえば、昭和・平成の芸能マスコミに数々の話題を提供してくれた人物だが、最も印象深かったのが、東映ヤクザのコワモテから転じ、ヒョーキンなオジサンぶりで女子高生から「キャ~、カワイイ~」と騒がれている頃に勃発した「隠し子」騒動だ。
一部女性誌が「独占スクープ」と銘打って、女優・千葉マリアとの間に3歳になる子供がいると報じたのは、1987年10月。千葉は18歳の時に、天地真理や麻丘めぐみと同期デビュー。清純派として活躍したが、夫と子供がいることが発覚する。記事によれば、その後は地方巡業などで活動する中、京都のクラブで歌っていた際に知り合ったのが松方だった。10月19日、記者会見に応じた松方は、
「4年前にちょこっとお付き合いしていたんですが、別れた後は音沙汰がなかった。1年半か2年前、彼女が僕の事務所へやってきて、『赤ちゃんができたけど、私の力で頑張っていくから』と言われたんです。生まれてきた子供に責任はないし、野垂れ死にさせるわけにはいかん。まあ男としては、知らん顔もできないでしょう。子供の面倒は僕もひとつ頑張って、ということで一応、面倒見てきたわけです」
つまりは「男の責任」「男の甲斐性」であると強調したのだが、妻の仁科明子には早い段階で気付かれたらしく、
「女房にはほんなもん、すぐバレまんがな。ただ、すごい剣幕で怒った後は『いい年して情けない』で終わり。世界一の女房です」
ただし、浮気のペナルティーとして、
「極道息子はパイプカットされてしまいました。ま、しょうがないよ」
そう言っておどけて見せ、報道陣の笑いを誘う。昭和ならでは、松方ならでの、おおよそ「隠し子発覚」とは思えぬ記者会見は、そうして終了したのだった。
とはいえ、なぜこのタイミングで発覚したのか。千葉の所属事務所を取材すると、
「千葉自身は松方さんから毎月きちんと養育費を頂いているので、公表するつもりは全くなかった。売名? とんでもない、本人も戸惑っています」
という返答だった。事実である以上、発覚するのは時間の問題だったというわけだ。
その後、松方は再び浮気がバレて、仁科と離婚。2017年に鬼籍に入ったが、存命であれば、米バイデン大統領と同じ81歳(1942年生まれ)だ。優れた演技力と存在感、そして破天荒すぎる私生活に、改めて「昭和の大スター」を感じるのだった。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。