大相撲名古屋場所は照ノ富士が10回目の優勝を飾ったが、次の秋場所で最も活躍しそうな力士を選ぶとすれば、照ノ富士と優勝決定戦を繰り広げた隆の勝だろう。
「右を差して出ると勝ったようなもの、という安定感があるが、横からの攻めに弱い」
相撲解説者の舞の海秀平氏は、隆の勝の相撲をそう評している。
隆の勝はもともと、突き押し一本やりだった。ところがそこに、今場所よく見られた右差しを覚える。変わったのは、貴乃花部屋が2018年に消滅したことで同じ常盤山部屋に移籍してきた、貴景勝の影響を受けてからだ。
部屋の稽古では突き押しでは分が悪いため、立ち会いで踏み込むと、右差しを繰り出した。
かつては、ライバル同士だったが、今や1日20番の申し合いを重ねて切磋琢磨し、貴景勝は2歳上の隆の勝を「伸さん」と呼ぶようになった(隆の勝の本名が伸明)。
「一緒にならなければ、右差しはなかった」
と隆の勝は振り返っている。
緊張感のある稽古場で、2人が会話することはほとんどない。ちなみに名古屋場所で照ノ富士と対戦した14日目の朝は珍しく、貴景勝からアドバイスを受けたという。
「体も完璧じゃない大関(貴景勝)。自分は膝ぐらいで弱音は吐けない。自分の相撲を取り切る勇気をもらった」(隆の勝)
スポーツライターが言う。
「秋場所の優勝候補1番手は照ノ富士ですが、2番手には隆の勝を挙げたい。それに大の里です。大関から陥落した貴景勝は、10勝すれば復帰がかなう。隆の勝は二桁勝利を目指したい。両者はいい稽古ができそうです」
隆の勝は優勝もあるとみた。大の里の大関昇進を懸けた戦いといい、見どころ満載の秋場所が、今からもう楽しみで仕方がない。