8月5日発売の「週刊少年ジャンプ」36・37合併特大号(集英社)で「僕のヒーローアカデミア」が最終回を迎えた。連載期間は10年におよび、堀越耕平氏によるコミックはスーパーマンやスパイダーマンのような、アメリカンコミックに登場するヒーロー達が世界の秩序を守る社会が舞台。主人公はそんな「ヒーローとしての個性がない」少年、緑谷出久(デク)。個性がなければ認められない社会でデク少年の苦悩や戦いは、リアル社会で自分が何者か悩む子供達の共感を得た。
今号の「少年ジャンプ」は毎年恒例の、秋本治氏による「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の読み切りも掲載されており、読後の「満足感」はいつにも増して大きいのだが、ふと寂しさもよぎる。
「これで『呪術廻戦』と『ワンピース』が終わったら、月曜日をどうやって迎えればいいのか…」
毎週月曜日に発売される「少年ジャンプ」の購読歴は40年近くになる。早く続きを読みたい、ジャンプを買う楽しみを支えに、どうにか週の始まりの月曜日を乗り越えてきた。
だが「呪術廻戦」は作者の芥見下々氏が年内中の連載終了を示唆、「ワンピース」も作者の尾田栄一郎氏がいま執筆中のシリーズが最終章であると明かしている。
1980年代の連載といえば「こち亀」、鈴木亮平主演で実写化された「シティーハンター」に「ドラゴンボール」「キャプテン翼」「キン肉マン」「北斗の拳」「聖闘士星矢」「魁!!男塾」に「ジョジョの奇妙な冒険」と、世代を超えて読み継がれる名作揃いだ。
さらに90年代には2023年の映画興行収入トップとなった「スラムダンク」「るろうに剣心」「みどりのマキバオー」「遊☆戯☆王」など、テレビアニメ化や映画だけでなく、トレーディングカードという新たなビジネス、市場を作り出した作品まで揃う。発行部数653万部の「少年ジャンプ黄金期」が続いた。
むろん令和の「少年ジャンプ」も「ワンピース」「呪術廻戦」「ヒロアカ」のほか、2020年5月に連載が終了し、国内映画興行収入の歴代1位404億円を記録した「鬼滅の刃」など、社会現象を起こした名作が名を連ねる。
続いてアニメ化された「SPY×FAMILY」や「怪獣8号」は、「少年ジャンプ」のアプリ版およびウェブサイト「少年ジャンプ+」で連載されており、紙媒体から電子版へと移行しつつある。
そして現在の連載陣、新連載からアニメ化される作品がいくつ登場するかだ。
今やコミックは実写ドラマ、アニメの「原作」として欠かせない存在となっている。特に映画業界は興行収入がアニメ頼みであり、ネタの枯渇はテレビ業界、映画業界の死活問題になる。今のジャンプ連載陣は、アニメ化されても十分に視聴者を引きつけるポテンシャルを秘めているが、将来的によもやよもやの「作品が枯渇する」Xデーは来るのか。
ちなみに「マンガ学科」を有する4年制大学は14あるが、国内初のマンガ学科を設立した京都精華大学の公式サイトによると、学生の30%を留学生が占めているという。
「少年ジャンプ」に限らず作品が枯渇するかどうかは、生成AIの活用や外国人漫画家の育成にかかってくるのかもしれない。中高年読者にとっては「NARUTO」や「花の慶次」のように日本の忍者やサムライを主人公にした作品が減ったり、紙の雑誌をパラパラと読んでいくうちに引き込まれた作品が減っていくとしたら、それはそれで寂しい限りだ。
(那須優子)