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「小倉記念」から頂点へ!レッツゴーターキン大金星の裏で2大競馬予想家の「白熱バトル」があった

 8月11日の「小倉記念」は、阪神競馬場の改修工事による変則日程の影響で、今年は中京競馬場で行われる。

 小倉の重賞といえば、2005年に史上初の「小倉三冠馬」と呼ばれたメイショウカイドウなど、同コースの猛者たちが激走することでファンに親しまれているが、今年はまったくコース形態の違う中京競馬場ということで一休みだ。

 小倉では無双の馬がその後の中央GIで戴冠した、というケースは少ない。ローカル得意はやはりローカルどまりというのが一般的な定説だろう。だが「小倉記念」での好走を経て、秋のGⅠでファンを「あっ!」と驚かせた名馬はゼロではないのだ。

 往年のファンなら、92年の「天皇賞・秋」を11番人気で制したレッツゴーターキンを思い出すはずだ。

 レッツゴーターキンは新馬戦で6番人気だったことでわかる通り、決して大きなタイトルを期待されていた馬ではなかった。90年の3歳時には菊花賞に挑戦したが(11着)、それ以降、GⅠへの出走は前述の「天皇賞・秋」までない。

 初重賞奪取は4歳時で、小倉競馬場で行われた「小倉大賞典」「中京記念」を連勝し、一躍〝小倉ホース〟へと名乗りを上げた。ところが、その年はその後不調に陥り、重賞連対は翌92年8月の小倉競馬場「北九州記念」まで待たなければならない。競馬ライターが語る。

「8月の『北九州記念』(当時は1800メートル)が12走ぶりの重賞連対でした。結果は2着。そして次に同月の『小倉記念』に出走し、ここでも2着となり復調を確かなものとします。そして10月のオープン特別『福島民報杯』を勝ち、その勢いのまま、ローカル開催からの異例のローテーションで『天皇賞・秋』まで制してしまうのです。実は5歳にしてそれが東京競馬場初出走でしたから、普段は生で見たことのなかった小倉ホースの戴冠に場内のファンが度肝を抜かれたという感じでしたね」

 実はレッツゴーターキンが制した「秋天」には、休み明けながらトウカイテイオーという圧倒的な1番人気が君臨していた。東京競馬場では今だから話せる意外なバトルがあったという。

 当時、競馬場では昼休みなどに有名評論家による予想バトルなどが開かれることが多かったが、その日は当時、フジテレビの競馬中継で解説をしていた大川慶次郎氏と、同じくテレビ東京で解説をしていた原良馬氏が特設ステージで予想を繰り広げていた。前出の競馬ライターが振り返る。

「両名ともすでに故人ですが、人気予想家でしたから聴衆は大勢集まっていました。その中で、大川氏はトウカイテイオーを不動の本命としましたが、なんと原氏が中央のGⅠにまったく実績のないレッツゴーターキンを本命に推したのです。これにはファンはどよめきましたが、実はバトルというのはイベント開催後のこと。お二人は師弟関係にもありましたが、ステージを降りたあと、大川氏が原氏の予想に少し苦言を呈したのです。レッツゴーターキンを推すのは馬券を買うファンに失礼というわけです。ところが、原氏は『先生、これだけは譲れません』と、レッツゴーターキンへの揺るぎない自信を見せ、熱い議論になっていましたね」

 レースはダイタクヘリオスの高速の逃げを、休み明けで引っ掛かったトウカイテイオーが追いかける展開。最後の直線で自力でダイタクをかわすと、ファンが「さすがテイオー」と歓声を上げたが、折り合いを欠いた前半のツケが回ってゴール前で急失速。外から怒とうの脚で追い込んだ〝小倉ホース〟レッツゴーターキンが差し切るという、多くの馬券ファンがどよめく結果となったのだ。

 レッツゴーターキンはさらに臨んだ次走の「ジャパンカップ」では8着。勝ったトウカイテイオーにリベンジされた形となったが、2大予想家をも白熱させたローカルホースの末脚に、小倉のファンは胸を躍らせたに違いない。

(宮村仁)

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