パリ五輪でメダルを獲得した69人のうち66人が参加した「TEAM JAPAN 帰国時会見」(8月14日)では、メダリストがひと言ずつコメントしたが、その際、大いに場を盛り上げたのが、柔道男子100キロ級で団体銀メダル獲得に貢献したウルフ・アロンだった。
「本日は私のためにこのような会を開いていただき、誠にありがとうございます。応援ありがとうございました」
ウルフがそう言うと、厳粛な雰囲気だった会場は笑いに包まれた。
個人戦では敗者復活戦で敗れ、メダル獲得はならず。今後について聞かれたウルフは、
「これ以上、続ける気持ちはない」
ときっぱり断言。10月の佐賀国体には出場予定であり、引退については未定ながら、
「悔いはない。これ以上はできない」
報道陣にそう明かす、事実上の引退宣言となった。その理由を、ウルフを知るスポーツ紙記者が代弁する。
「今回、ギリギリで代表権をゲットしたものの、3年前の東京五輪に比べて、明らかにパフォーマンスが落ちていた。その状態で五輪に出てはみたものの、実力の落ち込みを実感させられ、限界を悟ったわけです」
ウルフはかなり前にYouTubeチャンネルを開設していたが、五輪のおかげで登録者がほぼ倍増し、10万人に到達。五輪後に初めてアップした「パリオリンピック応援ありがとうございました!」と題する動画の再生回数は、瞬く間に50万回以上に達した。
引退後の進路として有力視されているのが、格闘家への転向だ。国内最大の格闘技イベント「RIZIN」はスター選手・朝倉未来の引退により、新たなスター候補を探しており、メダルを獲得していなくても才能がありそうな五輪選手をスカウトしたい。
「ウルフもそのリストに入っていると思いますが、格闘技をやるなら、93キロ以下の階級でないとキツイ。とはいえ、もともと太りやすい体質だけに、自分で節制できるならばアリでしょう。それができなければ、他の道に進んだ方が賢明」(格闘技界関係者)
佐賀国体が終わるまでには、決断を下すことになりそうだ。
(高木光一)