レジェンド棋士の羽生善治九段の「まさかの頓死」に、将棋ファンが衝撃を受けている。
羽生九段と近藤誠也七段が対戦したNHK杯の2回戦が8月25日に放送され、先手・近藤七段が127手で勝利した。羽生九段優勢のまま突入した終盤戦、NHK杯の30秒将棋に落とし穴が待っていた。
近藤七段は7筋に残した歩を起点に、豊富な持ち駒で羽生王に一気に畳みかけた。羽生九段は最後、秒単位の持ち時間の中、王を守り切ることができずに投了。終局後には「終盤勝ちになったと思うが、寄せを誤った」と逆転負けを認めた。
羽生九段と近藤七段のこれまでの公式棋戦は、11対局で羽生九段の8勝3敗。羽生九段は「後手勝率」8割5分7厘と、圧倒的な強さを誇っていた。本局は後手番にもかかわらず、予想外のミスで勝利を取りこぼしてしまった形だ。
この敗戦を見届けた将棋ファンの中でにわかに浮上しているのが、「羽生引退説」。羽生九段は2016年に「名人」を失冠し、現在はB級1組に所属している。10月17日には近藤七段との対戦(ALSOK杯第74期王将戦)が再び控えており、またもや負けるようなことがあれば、A級復帰が遠のくことになる。
これまでの歴代実力制名人は、木村義雄十四世名人から藤井名人まで16名。失冠した際の進退はそれぞれだが、A級陥落後に引退、フリークラスに転出する棋士は多い。米長邦雄永世棋聖は「名人経験者がB級1組で指すことはできない」という言葉を残し、フリークラスに転出した。
もっとも、現在は名人のB級1組以下は許容されており、加藤一二三九段などはC級2組に陥落後、引退している。羽生九段が直ちにB級2組に降級する可能性は低いが、2023年に日本将棋連盟会長に就任していることで、体力的にかなり厳しいことは確かだ。近い将来、大きな世代交代の波が押し寄せるのは間違いなかろう。
羽生九段はこれまでNHK杯を11回制覇しているが、まさかの2回戦敗退で、ファンは悲観的な思いに駆られてしまったようだ。
(ケン高田)