それはドリームチームの爆誕だった。将棋の実況中継に心血を注いでいるABEMAテレビが8月31日、将棋の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」の本戦トーナメント準決勝の第1試合「チーム藤井VSチーム永瀬」の模様を放送した。
惜しくも準決勝敗退となったチーム藤井(チーム名:パイナップル)だったが、藤井聡太七冠は半年間を戦い抜くトーナメント戦の相棒として、羽生善治九段、青嶋未来六段を指名していた。
この団体戦や将棋会館のクラウドファンド、タイトル就位式で藤井、羽生の新旧七冠が顔を揃えると、どうしても頭をよぎるのが「20代の羽生善治と今の藤井聡太が直接対決したら、どちらが勝つのだろう」という妄想だ。
その参考となるのが、9月4日から始まる第72期王座戦5番勝負(第1局は神奈川県秦野市の元湯陣屋にて)だろう。
昨年度は王座戦5連覇と名誉王座資格獲得のかかる永瀬拓矢に、前人未到の「八冠独占」がかかった藤井七冠が挑戦した。第4局の終盤、AIは永瀬王座の「勝率99%」を予想していたにもかかわらず、持ち時間ゼロの1分将棋から繰り出した永瀬王座の1手のミスから、5連覇と名誉王座資格がこぼれ落ちた。あの因縁の対局が、再び始まるのだ。
この王座戦、1992年度から19連覇(通算24期)していたのが羽生善治・日本将棋連盟会長だ。羽生が初王座、そして棋王と王座の二冠を達成したのは21歳の1992年9月であり、20代、30代、40代とタイトルを保持してきた。藤井の初王座と八冠達成も、21歳の2023年10月。王座戦の戦績を通して、20代の羽生と20代の藤井を比較することができる。
永瀬九段との「将棋研究」を一時休止して、王座戦に備えていると言われる藤井七冠。王座返り咲きを狙う永瀬九段の猛攻をかわして連覇できるのかに加え、羽生が持つ19連覇にどこまで肉薄できるのか。
藤井王座の半生を懸けた長い旅が、間もなく始まる。
(那須優子)