J1で断トツ最下位だったコンサドーレ札幌が息を吹き返してきた。
9月1日に行われた川崎フロンターレ戦で2-0の完封勝利。今季初の3連勝を飾ると、13試合ぶりにサガン鳥栖を抜いて最下位を脱出した。
今季の札幌はリーグ戦の序盤に5連敗、中盤に8連敗の屈辱を味わい、夏を迎える前に降格待ったなしの最大のピンチを迎えていた。
まるで勝てないチームに、7年間チームの指揮を執る名将ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の解任が噂される中、5月末に札幌は緊急声明を発表。そこで、
〈今シーズンの最後までミシャ監督と戦う決意をしました〉
と、体制の継続を決めたのだ。これに驚いたのはサポーターだった。Jリーグを取材するサッカーライターが振り返る。
「監督を交代させたからといって、状況が一変するわけではありません。しかし、ミシャ監督のサッカーはどの対戦相手にも丸裸に研究され、サポーターの間ではさすがに変化が必要だという意見が大勢を占めていた。それだけにクラブの決定にあ然としたのです。しかも、続投発表直後の東京ヴェルディ戦で3-5と大敗し、不信感は極限まで上昇し、諦めムードが漂ったのです」
さすがにこれで焦ったフロントは、夏の移籍市場で積極的な動きを見せる。DFパク・ミンギュ、DF大﨑玲央、MFフランシス・カン、FW白井陽斗、FWジョルディ・サンチェス、FWアマドゥ・バカヨコ、FWキングロード・サフォという7名の大型補強を敢行したのだ。
「特にヴィッセル神戸のJ1優勝と天皇杯制覇に貢献した経験を持つ、大﨑の加入が大きかった。これまでチグハグしていた守備と攻撃の間でボールをつなげる役割を担い、安定したリズムが生まれるようになったんです。8月16日に行われたサガン鳥栖との〝裏天王山〟で5-3の乱打戦を制しチームが波に乗りましたね」(前出・サッカーライター)
現在、降格を免れる17位の湘南ベルマーレとの勝ち点差は「7」とまだ苦しい。だが、どん底の時期に比べれば希望の光が差している。
ここはチームとサポーターが一体となって残留に向けて結果を出したいところだが、サポーターの中にはどこか納得できないモヤる気持ちが捨てきれないのが「事実」として残っているのだ。
「毎年、主力選手が引き抜かれ、昨季のシーズン終了後にはFW小柏剛(FC東京)、DF田中駿汰(セレッソ大阪)、DF福森晃斗(横浜FC)が移籍。ドリブラーのMFルーカス・フェルナンデス(セレッソ大阪)とは契約を延長せず、チームがガタガタになっているのはキャンプ前にわかっていたはず。ところが、フロントは今まで何だかんだJ1に残留できたことにあぐらをかき、即戦力の補強をしなかった。その結果、チームが崖っぷちまで追い込まれてから、途端になりふり構わずに7人の緊急補強ですからね。『遅すぎるだろ』と怒りのツッコミがあるのは当然でしょう」(前出・サッカーライター)
シーズン終了後、札幌が大逆転で残留することができていれば「奇跡」という言葉が使われるはずだ。しかし、それで低迷の原因を招いたフロント陣の怠惰ぶりを帳消しにしていいものなのか。
何はともあれ、残留サバイバルマッチの行方をしっかりと見守りたい。
(風吹啓太)