テリー 今年は芸能活動の35周年ということで、あらためて節目ですが、何か考えていらっしゃることは?
コロッケ ものまね50人メドレーを違う形でお披露目するのと、あとは新しく「ものまね“楽”語」というのを始めたんですね。
テリー ものまね落語?
コロッケ はい、字は「楽しい」という字を当てて「楽語」と。古典落語を自分なりにアレンジして、登場人物を全員別の人間に変えるんです。
テリー ああ、ものまねで演じていくんだ。
コロッケ おとっつぁんが田中邦衛さん、おっかさんが淡谷のり子さん、子供が志村けんさん、通りすがりの犬が美川憲一さんとか。
テリー 古典落語のストーリーはそのままで、八つあん、熊さんだったりが志村けんさんとかになるわけだ! 聞いただけでおもしろい(笑)。
コロッケ 春風亭小朝さんに「コロッケさん、落語やらない?」って声をかけていただいたのがきっかけなんです。その時に「ものまねじゃなくて普通でいいんだよ」って言われたんですけど、僕がお客さんだったら、コロッケが普通に落語やってたら「ふーん」って思うなと。これはやっぱり配役を全部変えてやれたらいいなと思って。
テリー 僕も落語をやったことがあるんですけど、人物によって目線が違うじゃないですか。
コロッケ はい。それが特に大変でしたね。おとっつぁん役の田中邦衛さんがこっち(目線を右下)、おっかさん役の淡谷のり子さんがこっち、(目線を左下)そして志村さんは子供役なんで、ちょっと上を見上げる感じなんですよね。
テリー そうそう。子供は目線を上目使いにしなくちゃいけないんだよね。
コロッケ セリフも全て声色を変えなきゃいけない。もちろん他にも登場人物がいて、おとっつぁんを説得するにはやっぱり、武田鉄矢さんだなと思って、「お前は娘の気持ちがわかってないんだよ!」(武田さんのものまねで)‥‥というふうに。
テリー この声だよ。武田鉄矢さんが目の前にいるもんなあ(笑)。すごい。
コロッケ ありがとうございます。
テリー 何なの、この才能は。
コロッケ いやいや。どうして落語をやるかというと、年を取って今までみたいに動けなくなった時にもできるんじゃないかと思ったんです。それで「ものまね“楽”語」と名づけて確立すれば、70歳や80歳になっても、ものまねの後輩たちと一緒にできますから。
テリー それにしても、コロッケさんとは長いつきあいだけど、昔と同じように接してくれますよね。今は大物なんだけど、重くないっていうか。
コロッケ あ、それはとてもうれしいです(笑)。
テリー そういう部分が、芸人として大切な部分でもあるよね。
コロッケ 芸能界に入った頃の最初の気持ちを忘れている方を見ると、「えっ」と思います。僕は最初、モテたくてものまねを始めて、ものまねだけじゃモテないことに気がついた。「じゃあダンスをやったほうがいいかな」と思ってやり始めると、結局ダンスでも、格好いい人がモテるんだと、あとから気づいて(笑)。そんなことの繰り返しだったのが、「芸で喜んでもらえる快感」に気がついて。僕はその気持ちをいまだに忘れてないんですね。
テリー 「モテたい」は芸事の基本ですよね。
コロッケ みんなで飲みに行った時も、ものまね芸人の方には、酒席でやるのは嫌だっていう方もいらっしゃいますけど、僕は逆に酔っ払ってくると勝手にやり始めちゃう。「えっ、芸を見せてもらっていいんですか」と言われると「いいんですかって何?」と。
テリー みんな恐縮してしまいますよ。だからコロッケさんはすごいと思う。
コロッケ いえいえ、初心を忘れたくないというだけなんです。