東アジアの中秋節や日本の連休が重なったことで、9月中旬の京都は多くの観光客で賑わっていた。その一方で、各地で問題となっているのが、外国人向けに商品を高額で販売する「インバウンド価格」だ。北海道のニセコや大阪の黒門市場でもこの問題が浮上しているが、京都の錦市場でも同様の状況が見受けられた。
錦市場では生牡蠣や海老の串焼きがひとつ1000円前後、海鮮丼が5000円近くといった強気の価格設定が目立つ。しかし京都人特有の奥ゆかしさなのか、一時の黒門市場ほどの「ボッタクリ感」は感じられない、との声がある。とはいえ、ウニやキャビアを乗せた串焼きが1500円という価格には、日本人観光客からも首をかしげる反応が見られた。
錦市場は400年以上の歴史を誇り、「京の台所」として親しまれてきた。昨今の変化を、地元住民はどう感じているのか。本音はこうだ。
「コロナ前の爆買いやラグビーワールドカップで混雑した頃から、錦市場は地元の人が足を踏み入れない場所になりました。昔は京都人しかお店を出せなかったのですが、不景気の影響で県外や海外の人に高額で店舗を貸すようになり、地元住民からは黒門市場のように嫌われる場所になっています」
さらに、インバウンド価格について聞くと、
「個人的には、もっと高くしてもいいと思います。京都市は深刻な財政難に直面しており、観光客のせいでバスや電車が地元住民の通勤や通学に支障をきたしているのが現状です。観光客はタクシーにはほとんど乗らず、レンタルサイクルや電動キックボードを利用するので、タクシー業界も厳しい状況にある。さらに京都市営地下鉄は開業以来、一度も黒字を出していない。これが京都市が財政難に陥っている一因です」
事実、京都の観光資源である寺院や仏閣は無料で入場できることが多いため、市の財政には寄与していないことになる。市内のホテル料金はコロナ後に急騰したものの、外国人観光客が他にお金を使う場所が少ないのが現状だ。
「インバウンドは地元民にとってオーバーツーリズムの原因になるし、利益よりも負担が大きい」
別の地元住民はそう語る。観光地として栄える一方で、京都市はインバウンドの影響に悩まされ続けている。
(京野歩夢)