政治家にとって言葉は命、そんなことは言わずと知れた事実だ。だからこそ失言や暴言を放った際には、野党やメディア、さらには国民から猛バッシングを受ける。早々に発言を撤回して謝罪に追い込まれ、下手をすると辞任や更迭となるのが、お決まりのケースだ。
ところが政治家の中にもある一定数「誤り下手」が存在する。こういう人物は素直にごめんなさいと言えないのか、あるいは謝り方を知らないのか。いささか厄介な事態になるのだ。その典型が、今年7月の河野太郎デジタル相による、「やから発言」の余波ではなかろうか。
コトの起こりは、7月2日に行われた都議会議員補欠選挙だった。候補者応援のため、東京・足立区でマイクを握った河野氏の演説中、聴衆から「デマ太郎」「裏金を説明しろ」というヤジが飛ぶ。
すると顔を真っ赤にしてブチ切れた河野氏が、反撃に出たのである。
「選挙運動を通じてYouTubeの再生回数を増やしてお金を稼ごう、というよこしまな考えで、選挙妨害に近いことをやるような人が増えてきた。人が話している時に、その横で大きな声を上げる。選挙の役にも立たないし、この国の未来を作ることにも何の役にも立たない。選挙妨害をする『やから』を許しておいてはならない」
大辞泉によれば、「やから」とは「同じ血筋の人々。一家一門」とするも「特に、よくない連中」とある。例としては「行儀を知らぬ―」「不逞(ふてい)の―」と書かれてある。当然、そんな言葉を一般の聴取に言い放てばどんな反応が返ってくるかは、デジタル大臣であれば容易にわかるはずだ。
案の定、直後から非難轟轟の嵐に晒される。批判を受けた河野氏は翌日、視察先の秋田県で記者団に囲まれて釈明。
「言葉の選び方は慎重にしなければいけない」
そして演説の内容がヤジでかき消された、というニュアンスを込めて、
「そうしたことは慎んでもらわなければいけない」
この「俺が悪いんじゃないから」ととれる釈明に、SNS上にはバッシングの言葉があふれた。
〈あ~やっぱりこの人、素直に「ごめんなさい」って言えないんだな〉
〈釈明じゃなくて謝罪が先なんじゃないの〉
河野氏の「謝罪拒否」の姿勢は、政治部記者の間では有名な話であり、
「それは問題発言ではないかと食い下がる記者に対して、ほとんどの場合は理屈を並べて論破しようとする。あるいはSNSをブロックするか、スルーして批判そのものを受けないようにすることも多い。なのでこの時の釈明も、我々の間では『やっぱりね』としか思わなかった」(政治部デスク)
常々「民主主義の基本が選挙だ。お互いが主張を聞いて議論ができる選挙にしていかないといけない」と述べている河野氏。自民党総裁にふさわしい人物かどうかは、やがて結果が出る。
(山川敦司)