2026年に開催される北中米ワールドカップ(W杯)の出場を目指す韓国は、今年2月にユルゲン・クリンスマン監督を解任してから、新監督が一向に決まらず暫定監督に代表チームを任せていた。
このままアジア最終予選を迎えると思われたが、7月に日本のサッカーファンにも愛されたホン・ミョンボ氏が10年ぶりに代表監督に就任した。
これで一件落着。9月のW杯アジア最終予選で新体制が動き出したのだが、ここにきて「代表監督の選任過程」をめぐって騒動が勃発している。言わば、まるで韓流ドラマのような泥沼模様の展開になっているのだ。
「外国人監督をベースに検討していたはずなのに、明確な理由がないまま急に方向転換して韓国人監督を選任したことや、監督選任に取り組んだ元韓国代表のパク・チュホ氏が自身のユーチューブチャンネルで、戦力強化委員会が代表監督を事実上内定していたような不穏な動きがあったことを暴露したのです。これによって国民の間で波紋が広がったことで、文化体育観光委員会が調査を実施しました。しかし、韓国サッカー協会側が資料の提出を拒んだことで、国会で議論するまで問題が大きくなってしまった」(サッカーライター)
9月24日にはホン・ミョンボ監督と、パク・チュホ氏が国会で開かれた文化体育観光委員会の全体会議に出席。騒動以来、公の場で2人が初めて顔を合わせると、ギクシャクしたぎこちない握手が話題になった。
ちなみに、ホン・ミョンボ監督は出来レースの疑惑に対して「選任手続きが不公正だったり、特別扱いをされたとは思わない」と全面否定している。
しかし、与野党の議員が韓国サッカー協会を批判し、テレビ局が監督候補の面接場所は「パン屋だった」と報じるなど、韓国内では逆風が吹き荒れていた。
最悪の場合は「選考のやり直し」まで急浮上しているが、そうなった時に踏んだり蹴ったりなのはホン・ミョンボ監督だ。
「代表監督に就任した際、もともとKリーグで首位争いをしていた蔚山HDの監督を務めていました。そして就任の噂が出て際に『興味ない』と否定をしていたのに、急転直下でチームを見捨てて韓国代表監督を選択したわけです。サポーターからは『ウソつき』のレッテルが貼られ、日本では考えられないほどの嫌われ者になると、韓国代表のアジア最終予選の初戦となったパレスチナ代表との一戦では、ホームゲームとは信じられないような大ブーイングを浴びました。もはや、W杯に出場して本大会で好成績を残す以外に、サポーターから認めてもらう方法はありません。ところが監督選考のやり直しが起きれば、代表監督から外される可能性が高い。韓国内で帰る場所がどこにもなくなってしまうのです」(前出・サッカーライター)
10月にはアジア最終予選のヨルダン、イラク戦が行われる。かつてないゴタゴタ続きの中、韓国代表はベストコンディションで試合に臨めるのか。「アジアの盟主」は様々な観点から最大のピンチを迎えているのだ。
(風吹啓太)