猫を飼い始めると、お付き合いが始まるのが動物病院だ。治療費は自由診療なので、病院によってそれこそマチマチ、診療内容もピンキリだ。
ウチの猫でいえば、2021年11月に死んだジュテ。いわゆる末期ガンだった。この時は正確に診断してもらおうと、かかりつけの病院に専門病院を紹介してもらった。こういう過程は人間と全く同じ、セカンドオピニオンである。
ジュテはお腹、小腸の周辺にシコリが何個もできて、肺に転移している可能性があった。連れて行った専門病院では、レントゲン検査と超音波検査をやってくれた。診断結果はというと、癒着している部分の手術が難しく、手術はしない…。
費用はカルテ登録料1100円、腫瘍科診察料6600円(初回)、レントゲン検査(1枚)2750円×4=1万1000円(3枚目以降は値引きあり、2枚で1100円)、超音波検査6600円、合計で2万4200円ナリ。
動物の治療費は高いと思われがちだが、保険がきかないのに、ガンの診断にかかる費用としては、高いとは思えない。いや、これくらいで済むのかというのが、正直な感想だった。手術できるならやってもらおうかと、内心は思っていた。その費用がいくらになるかわからないが、それでもと覚悟していたので、負担は少なくて済んだ。
人間のがんセンターのように、高度な医療機器を導入している動物病院は増えているようだ。
大学病院では、例えば東京大学大学院農学生命科学研究科の附属動物医療センターがある。ここには内科や外科、眼科、病理・遺伝子診断部などいくつも診療科があって、高度で専門的な治療を受けることができる。
「動物病院の先生方へ」という項目を見ると、はっきりと「当センターは二次診療施設のため、かかりつけの動物病院からの予約診療のみを行っております」という断りがあり、セカンドオピニオン専門であることがわかる。これはどこも同様のようだ。猫を飼っている知人がセカンドオピニオンでここを紹介され、気管にできたリンパ腫で通院している。
東京農工大学の動物医療センターには腫瘍科、整形外科、内科、循環器科、皮膚科などがある。他には日本獣医生命科学大学の動物医療センターも。
民間では都内に5カ所ある動物医療センターPeco、日本小動物医療センター(JSAMC)の本院・所沢センター、目黒消化器サテライトなど。JSAMCの場合は総合診断や消化器、循環器、胃腸などがある。
こうしてみると、かかりつけ医が診断するのが難しい病気の場合、もっと高度な医療を受けることができるのだ。人間の医療技術は日々進化しており、それは猫に関しても同じ。動物の外科手術のゴッドハンドを紹介しているテレビ番組を見たことがあるが、猫の医療の世界は人間並みになりつつある。
在宅でもこんなことまでできる、という例がある。ジュテは最後は、かかりつけの病院に連れて行くのも困難になった。体力を消耗させてまで病院に運ぶのは忍びなかった。そこで医師は、補液(人間でいえば点滴)のやり方を教えてくれた。呼吸が苦しくなった時のための、ペット用酸素ハウスの業者も紹介してくれた。酸素室である。酸素濃度をコントロールして少しでも楽に呼吸ができるように、ガラス張り風の装置に入れる。業者が持ってきて、使用後は引き取りに来てくれる。
苦しそうにしているジュテを酸素室に入れて様子をみたが(写真)、酸素室なんて人間でもかなりの違和感があるはずで、まして猫にとってはそれ自体がストレスかもしれない。しばらく入って、途中で嫌がって出てくることが多かった。ただ、やるだけのことはやろうと、必死の思いだった。
ジュテが死んで3年近くになる。あれから猫の医療はもっと進化しているに違いない。猫でも人並みに診てもらえるから、異変に気が付いたら、いろいろな治療方法があることは頭に入れておきたいものだ。(おわり)
(峯田淳/コラムニスト)