国会議員が贈賄や収賄の疑いで逮捕される事件はままあることだが、最初から詐欺が目的で国会議員になった人物がいた。1997年に出資法違反および詐欺罪で逮捕された、友部達夫元議員だ。2001年5月、最高裁で懲役10年の実刑判決が確定するまでの約4年間、不登院のまま議員のイスにしがみつき続けた「オレンジ共済事件」の主役といえば、思い出す人はいるだろう。
友部氏は1986年に「オレンジ共済組合」という無認可の共済組合を設立。バブル崩壊による金利低下の中、元本保証と配当金利約7%を謳った「オレンジスーパー定期」という金融商品を売り出し、これが大当たり。1995年の参院選で、友部氏は新進党から出馬することになる。
というのも友部氏、実は1983年から「年金党」なる政党の代表として選挙に出馬するも、落選し続けてきた人物だった。そこで「オレンジスーパー定期」で得た莫大な収益の一部を、政界工作に投入。当確ラインである比例名簿順位13位というポジションを獲得して、初当選したのである。
念願だった「国会議員」の肩書きを得たことで、さらに商売に精を出すようになる。だがこの「オレンジスーパー定期」なるものは、全くのでたらめ商品だった。
「この商品が消費者の心をつかんだのは、配当金7%という微妙な金額設定にありました」
こう語るのは、当時を知る社会部デスクである。続けて言うには、
「そして他の金融商品よりも少しだけ得する、というイメージを作ったことが大きい。友部氏は『オレンジ共済はこくみん共済、都民共済、KSD、JA共済に続いて国から5番目に認可を受けた共済です』と吹聴。生命保険や損害保険などを手掛ける一般の代理店がこの商品を扱ったことで、消費者はコロッと騙されてしまいました。国会議員になってからはなおのこと、まさか国会議員が主宰する共済が無許可であるとは誰も思わない。友部氏はその先入観を利用し、『オレンジスーパー定期』の加入者を増やしていったというわけです」
しかし、預かった金を運用した形跡はほとんどなく、実態は右から左への単なる自転車操業。当初は毎月支払っていた配当金が次第に滞り、1995年に会員数2500人、93億円を集めたオレンジ共済組合は破綻することになった。
裁判で明らかになったのは友部ファミリーの豪遊ぶりで、1匹数百万円もする熱帯魚を数十匹も購入。ついでに熱帯魚専用マンションを買ったり、1泊数十万円の高級ホテルに連泊し、海外でブランド品を買い漁っていことも発覚した。車はフェラーリやロールスロイスにとどまらず、F1レーサーのアイルトン・セナが実際にレースで使用したものを購入するなど、使いたい放題に金を使いまくったというのだから、開いた口が塞がらない。
逮捕の瞬間、「みんな秘書がやった」と言い放ったとされる友部氏に、最高裁から下された判決は懲役10年。2012年1月に鬼籍に入ったと伝えられるが、まさに詐欺のために国会議員になった男だったのである。
(丑嶋一平)