いよいよ最終節を迎えるサッカーJ2リーグでは、降格するのがザスパ群馬、鹿児島ユナイテッドFC、栃木SCの3チームに決定したことで、見どころは「J1昇格争い」に絞られた。
年間順位の上位2クラブが自動昇格するシステムで、清水エスパルスが優勝を飾り、3季ぶりのJ1復帰が決定。もう1チームは優勝争いを繰り広げた横浜FCで決まりだと思われた。だが、ここで落とし穴が待っていた。
第35節のベガルタ仙台と第36節のファジアーノ岡山戦で、J2最少失点の守備陣が崩壊し、まさかの連敗。さらに前節はJ3降格の栃木SC相手に、守備陣は立て直したものの、今度は攻撃陣が沈黙するという事態が起きる。まさかのスコアレスドローで勝利が遠のくと、3位のV・ファーレン長崎が4連勝で怒とうの追い上げを見せ、勝ち点差3まで急接近したのだ。
しかも得失点差は、横浜FCがわずかに1点、上回っているだけ。最終節で長崎が勝利し、横浜FCが敗れた場合、得失点差は自動的にひっくり返る計算となり、大逆転で長崎のJ1自動昇格が決まるのだ。サッカーライターはさすがに興奮を隠せない。
「今回の大逆転が完成したら、まさにプロ野球日本シリーズの横浜DeNAベイスターズなみのスーパー下剋上です」
最終節は横浜FCがアウェーでレノファ山口FC(9位)と対戦し、長崎はホームに愛媛FC(17位)を迎える。両チームのサポーターさえ予期せぬ展開となっているだけに、どのようなクライマックスが待っていても不思議ではない。
さらにその下では3位から6位のプレーオフ争いが、最終節までもつれ込んでいる。
3位以上が確定している横浜FCと長崎のほかに、4位のファジアーノ岡山がプレーオフ進出を決めたことで、残る2枠を5位・モンテディオ山形「63(勝ち点)」、6位・ジェフユナイテッド千葉「61」、7位・ベガルタ仙台「61」の3チームで争うことになる。
大注目は山形と千葉の直接対決。勝利の鍵を握るのは、ここまでチームを引っ張ってきた2人の「王様」だ。前出のサッカーライターが解説する。
「夏に鹿島アントラーズからMF土居聖真が加入してから、山形の勝率は9割を超えて、クラブ史上初の8連勝中。J屈指のイケメンで知られる土居は、プレーでも見た目でも異彩を放ち、手がつけられない状態になっています。一方、千葉の王様として君臨するのは、今季23得点を記録し、得点ランキングトップを独走するFW小森飛絢。マークが厳しくなった第21節の栃木戦から第27節のいわき戦まで、無得点で悩める時期がありましたが、一度プレッシャーをはねのけると、再びゴールを量産。一瞬でも隙が生まれれば、今度はチャンスを逃すことはないでしょう」
7位の仙台は前節のロアッソ熊本に痛恨の逆転負けを喫し、プレーオフ進出圏外へと後退。最終節はホームに15位の大分トリニータを迎える。ここまで13ゴールをマークするエースのFW中島元彦が、熊本戦でも先制ゴールを奪って好調なだけに、あとはモチベーターの森山佳郎監督がどんな檄を注入するのか、だろう。
天国と地獄が待っている一大決戦は全試合、11月10日の14時にキックオフ。サポーターは他会場の経過も気にしながらの、大変な週末となりそうだ。
(風吹啓太)