11月10日にメキシコで開幕した野球の国際大会「プレミア12」に「異常事態」が発生している。
世界ランキング上位12カ国がしのぎを削るWBCに次ぐ大きな大会は、12カ国がグループAとBに6チームずつ振り分けられての総当たり戦を行い、各グループ上位2チーム(計4チーム)が東京ドームでの「スーパーラウンド」に進む。
スポーツ専門のケーブルテレビが、侍ジャパンのグループBだけでなく、グループAのメキシコラウンドも全試合を生中継。ところが開幕戦のパナマ×オランダを見ていたら…。
なんと「まだ向こう(メキシコ)は無観客でやってるんだ」「またコロナが流行ってるの?」といったコメントがSNSに流れ出したのだ。しかし、決して無観客開催にあらず、観客数がたった347人だったのである。あれでは視聴者が無観客だと勘違いするのも仕方なかろう。
11月12日までに、グループAは8試合が行われているが、観客が1万人を超えた試合は1試合もなく、開催国のメキシコでさえ、プエルトリコ戦は1921人と冴えなかった。マイナーリーグの選手によるアメリカが出場した試合だけが、なんとか5000人を超えている状況だ。スポーツライターが肩を落として言う。
「試合内容は正直言って、日本代表選手が普通に実力を出せば楽勝というレベルです。40代の投手がチラホラいますし、球速はMAXで90マイル(144キロ)前後。打者の振りは日本の一線級投手の鋭い変化球に対応できるとは到底、思えません。観客の少なさに驚いた日本のファンが同時に『ワールドシリーズとの落差がすごい』と嘆いたように、プレミア感が薄いことは否めないですね」
五輪で正式種目になれない野球の国際試合を増やして、競技人気を高めたいという意図があるプレミア12だが、これではもう…。
「侍ジャパンはおそらく、かなりの高確率で優勝するでしょう。ただ、これでは『日本による日本のための』と揶揄されかねない。結局はシーズンオフであり、どこの国の選手もピークの状態で戦っているわけではありません。開催時期を再考しないと、いつまでたっても世界的な野球人気の広がりにつながる大会にはなりえない」(球界関係者)
強化試合で来日したチェコ代表は、バンテリンドームを埋め尽くした3万3000人超の観客に感動したという。スーパーラウンドに進出したグループAのチームは、開幕戦(347人)の100倍以上となる東京ドームの観衆の中で、夢見心地を味わうだけになるのだろうか。
(田村元希)