第3回WBSC「プレミア12」のグループBは、日本×オーストラリア戦が11月13日にバンテリンドームで行われたが、戦前の予想通り、日本が4回まで毎回得点を挙げて9-3で快勝した。
試合はテレビ朝日系列で生放送され、侍ジャパン公認サポートキャプテンの中居正広が白熱した試合を興奮気味に伝えたが、実は野球ファンに大好評だったのは、Amazonプライム・ビデオのネット生配信だった。
Amazonプライム・ビデオでは、解説に2006年のWBCで活躍した元ロッテの里崎智也氏と、11月12日に史上10人目となる両リーグでのゴールデン・グラブ賞を受賞した広島の秋山翔吾を迎え、試合開始前から現地の様子をライブ配信した。
里崎氏の解説はいまやすっかりお馴染みだが、出色だったのは秋山の卓越した「言語化能力」だ。
7回裏、6番の牧秀悟が中前適時打を放つと、源田壮亮が代走として送られた。その源田が牽制にひっかかり、慌ててギリギリのタイミングで帰塁すると、塁審の判定はセーフだった。すると秋山は、
「逆源田の1ミリですか、これは」
と解説。視聴者は「また『源田の1ミリ』が炸裂したか!」と大盛り上がりだった。
源田は2023年のWBC準決勝のメキシコ戦で、二盗を試みた相手走者を的確なグラブ捌きでタッチアウトにした。これがサッカーW杯で話題になった「三苫の1ミリ」にちなんで、「源田の1ミリ」と呼ばれたのである。
秋山はチームメイトの小園海斗の打撃についても、
「小園選手は左ピッチャーの曲がり球がすごく上手」
と褒めながら、技術的な部分をユーモアを交えてコメント。「自分の視点で思っていることをはっきり言う」と好評だった。
秋山はセ・リーグのクライマックス・ファイナル第4戦でも解説したが、その際も実況アナから尋ねられたことを、よどみなく言語化。同学年の巨人・坂本勇人のバッティング場面では、
「いつもと違って右手と左手の間を空けて振っている」
坂本のバットの握りにまで、細かくチェックを入れた。その上で、
「打席でバッティングを変えられるのが、坂本選手の強さですね」
坂本はこの日、3打数2安打1打点だった。
秋山のわかりやすく落ち着いた解説に、現役選手であることを一瞬忘れてしまったファンは多かったのではないか。思っていることをこれだけ的確に言葉にできるのだから、現役引退後は指導者のオファーがいくらでも舞い込むことだろう。
(ケン高田)