マッチングアプリで知り合った女性から、借金の名目で3650万円を騙し取ったとして、愛知県警は11月12日、無職の江尻舟一容疑者と武田佑気容疑者を詐欺容疑で再逮捕した。両容疑者は同じ女性に結婚をほのめかしながら、返済するつもりがないにもかかわらず、金を借りて騙し取ったとして逮捕されていた。
この女性の被害総額は1億円を超えるとみられ、他にも同様の被害相談が複数寄せられているという。
江尻容疑者は無職であるにもかかわらず実業家を装い、女性を信用させていた。近年、マッチングアプリが出会いの手段として普及する中で、こうして女性を騙す手口は増加している。「自称経営者」の男性とアプリで知り合い、被害を受けた都内在住の30代女性が証言する。
「彼は最初のデートから羽振りがよく、私に頻繁にプレゼントをくれたり、高級ホテルに連れて行ってくれたりしました。ところがひと月ほど経った頃、クレジットカードの支払いが100万円近くになっているのに気付きました。彼が私のカード情報を盗んでいたことがわかったんです」
不正利用として警察に届け出たが、男はすでにアプリを退会していた。
別の都内在住女性も、同様の手口で被害に遭ったと話す。
「自称バーテンダーの男性と知り合い、一緒にバーを出したいと言われました。そのために数十万円を援助しましたが、具体的な行動に移す気配はありませんでした。その後、彼と音信不通になり、友人から『あんたの元カレ、SNSで見かけたけど、結婚して店をやってるよ』と言われて驚愕しました。結局、彼は他の女性に貢ぐ資金を、私に出させていただけでした。借用書もなく、警察にも相談できず、泣き寝入りするしかありませんでした」
金を貸した相手が返済しない場合、その行為自体が直接的に刑法で処罰されることはなく、多くの場合は「民事」として扱われる。そのため、警察に相談しても被害届は受理されず、詐欺罪などの犯罪が成立する可能性は低いとされる。
近年、マッチングアプリやSNSを通じて知り合った相手に対し、信頼関係を築いた上で金銭を求められるケースが増えている。たとえ信用できると感じた相手であっても、安易に金銭を貸すことには慎重になるべきではなかろうか。