出直し知事選で再選を果たした兵庫県の斎藤元彦知事に、今度は「公職選挙法違反」疑惑が浮上している。
コトの発端は斎藤氏が選挙後に初登庁し、知事就任式を済ませた翌11月20日朝に行われた、兵庫県内のPR会社の女性社長によるX投稿だった。二度のフランス留学歴があるという女性社長は、日本の公職選挙法をご存知ないのだろう。その内容は実に危うかった。
〈兵庫県県知事選挙にて、斎藤元彦さんの当選が決まりました。心よりお祝い申し上げます。前代未聞の歴史的な選挙が無事に終わった今、『SNS』という言葉が一人歩きしてしまっているので、今回広報全般を任せていただいていた立場として、まとめを残しておきたいと思います〉
そして得意げにスライド換算にして25ページにわたる、選挙用のPR戦略を語ったのだ。
公選法では選挙活動で報酬を支払える対象は、事務員や車上運動員、手話通訳者らに限定されており、もしこのPR会社に報酬が支払われていたとなると、公選法違反に抵触する。さらに、この投稿がヤバイのは、文末に書かれた女性社長の肩書きだ。
〈2021年より兵庫県地方創生戦略委員〉
〈2022年より兵庫県eスポーツ検討会委員〉
〈2023年より兵庫県空飛ぶクルマ会議検討委員/西宮市産業振興審議会委員〉
この中で兵庫県地方創生戦略プランは、令和6年分の予算額だけでも8575億円にのぼる。
斎藤知事は11月25日に「(PR会社に)ポスター製作費として70万円ほどを支払っている」と釈明したが、PR会社がポスター以外の選挙支援活動を無償でやっていたとなると、その報酬や見返りはどこから出るのか。いっそう疑惑を深める結果となった。
これらの疑惑について、元大阪府知事の橋下徹弁護士は自身のXで一刀両断。
〈これだけ斎藤さんの近くで兵庫県庁の仕事を受けていた人に、自分の政治活動・選挙運動の仕事は頼まんよ。疑われることが間違いないから〉
さらに橋下氏は昨年のプロ野球における阪神とオリックスの優勝パレードで、兵庫県が金融機関向けの補助金総額1億円を、昨年11月21日に成立した補正予算で4億円まで増額、協賛金を還流したのではないかと疑われた「キックバック疑惑」についても言及。
〈これ、野球パレードの寄付と補助金増額の時期が一致してキックバックの疑いを持たれた構図と同じ。いくら当事者がキックバックではないと言っても、あそこまで時期が一致すれば疑われない方がおかしい〉
これらの問題意識を欠く斎藤知事は、権力者として不適格と断じている。
本サイトで報じた通り、斎藤知事をめぐっては8000万円超の「北朝鮮への補助金」のほか、兵庫県内には自民党安倍派と「救急医療のドン」をめぐる医療スキャンダルが噴出している。安心して救急車も呼べない現状に有権者が怒り、既成政党に属さない斎藤知事に投票しても不思議ではないのだが、これで斎藤知事も「補助金利権ズブズブ」で、県議会との抗争の本質が「補助金利権の奪い合い」だとしたら救いがない。
ちなみに兵庫県の補助金事業の多さは、全国10指に入る。自公政権と国民民主党で調整中の「所得税住民税103万円の壁」引き上げで地方税収が減るというなら、財務省は疑惑に満ちた350案件にも及ぶ「都道府県の補助金バラマキ事業」を全面凍結すればいい。
(那須優子)