次の所属先がどうなるかと思っていた菊池雄星の新たな契約先は、大谷翔平がいたエンゼルスとなった。菊池は母校の花巻東高では、大谷の先輩にあたる。つい、縁は異なもの…と思いたくもなるが、3年6300万ドル(約97億円)の大型契約とあって、エ軍の菊池への期待のほどがうかがえる。
だがエンゼルスは2022年と2023年に89敗、今季は球団ワーストの99敗を喫し、暗黒期に入っている。
そして菊池獲得をめぐって噴出しているのが「オーナーのアルトゥーロ・モレノ氏の『パニック・バイ』なんじゃないか」というものだ。
菊池は昨季、ブルージェイズで先発ローテの一角として開幕を迎えたが、4勝9敗防御率4.75と振るわず、シーズン途中にアストロズにトレードされた。移籍後は5勝1敗と調子が上向いたのだが、ブルージェイズ移籍初年度の2022年も先発失格の烙印を押され、一時は中継ぎに回っている。2019年から2021年に所属したマリナーズでも、通算15勝しか挙げていない。活躍に継続性がなく、年俸30億円超の値打ちがあるか、疑問視されているのだ。
エ軍ファンには、同郷の大谷の活躍が、今でも脳裡に焼き付いている。仮に来季、菊池が思うような成績を残せず、チームも不調となれば、大谷とのギャップもあいまって「オレたちを助けてくれなかった日本人」として、戦犯扱いを受けかねないという。
そんな不安が漏れるのは、近年のモレノ氏が、極端な「買い物下手」であるためだ。メジャーリーグを取材するジャーナリストが言う。
「モレノ氏が球団を買収したのは、2003年シーズン中。前年にチーム史上初めてワールドチャンピオンに輝いたエンゼルスを、前オーナー企業のディズニー社からわずか1億8000万ドル(約160億円)で購入し、『なんて買い物上手なのか』と言われました。一方で、選手獲得に関しても口を出しまくりの、ワンマン経営者としても知られています。ただ、大成功例は大谷だけ。年俸50億円以上のレンドンは不良債権化していますし、12年契約で年俸57億円の主砲トラウトも、最近はケガでまともに出場できていません」
モレノ氏本人は野球愛とファンへの敬意が非常に強く、就任時には売店のビールを大幅値下げすることから着手し、ほとんどの試合を球場で観戦するという好人物。とはいえ、どうも選手のことでは愛が強すぎるがゆえに、選球眼は曇りがちになるようだ。そんな不穏な空気を、菊池が一掃してくれればいいが。