野球の国際大会「プレミア12」は、決勝で侍ジャパンに完封勝ちした台湾の優勝で終わった。大会を通して6勝3敗ながら、8勝1敗の日本を抑えて「世界一」の称号を手に入れたのである。
たった12カ国しか参戦しない大会で、対戦しない国が4つもありながら、結果的に同一国と3回も対戦する妙なシステム。そこに追い討ちをかけたのが、大会ベストナインに選ばれた顔ぶれだった。
指名打者を含む10人のうち、日本からは捕手の板倉将吾、二塁手の小園海斗、外野手の森下翔太が選出。ところが、大会を通じて圧倒的な実力と評された投手陣は先発、救援ともにゼロだった。
先発投手としてベストナインに選ばれたのは、44歳のアメリカ代表リッチ・ヒル。スーパーラウンド第1戦の日本戦に先発登板し、4回を1安打0封。2番手投手を打ち崩した日本が勝利したが、SNSには「ヒルが降りてくれて助かった」「打てる気がしなかった」というコメントが大量に投下されていた。
ヒルは今シーズン、レッドソックスで4試合のみの登板。全て中継ぎで、打者15人にしか投げておらず、すでに自由契約となっている。そんなピークをすぎた大ベテラン投手に手も足も出なかった侍ジャパンに対して浴びせられたのが「プレミアどころか社会人野球レベル」「日本の打者は独立リーグレベルなのか」というものだ。
近年の野球で特に増えたのは、右投げ左打ちの野手。もともと右利きの左打者なのだが、イチローの存在が火をつけたことは間違いなかろう。
今回の侍ジャパンでは、ベストナインに選ばれた小園、板倉、さらに辰巳涼介、栗原陵矢、源田壮亮、佐野恵太と、ズラリ並んだ。そして右投げ左打ちの選手がイチローに影響されて1塁方向への「走り打ち」が散見される。その結果、外へ逃げていくボールに対処できないケースが多々、出てくることに。
アメリカのヒルは195センチの長身と長い腕を駆使し、ボールが離れた瞬間は左打者に向かっていくように見えて、最後は外へ逃げていく球を武器にしていた。これは日本の右投げ左打ちの打者が苦手とするタイプであり、球速が遅くてもほとんど芯に当てることができず、なかなか外野にボールを飛ばせなかった。
事実、あの右投げ左打ちの頂点ともいえる大谷翔平でさえ、外角に逃げるボールを投げるヒルのワンポイント投球に牛耳られるシーンが、シーズン中に見られた。
そう思うと、日本野球の本当のレベルはどの程度のものなのか…なにやらモヤモヤしてくるのでる。
(田村元希)