今年のGⅠ戦線、春に続いて秋もまた1番人気馬が不振だ。秋華賞でルメール(45)とコンビを組んだチェルヴィニアが勝利を収めたのみで、エリザベス女王杯では単勝1.9倍のレガレイラでさえ5着にぶっ飛んだ。マイルCSまでのGⅠ計19戦のうち、わずか3勝という本命党にとってこの悪夢の流れは、一体どこまで続くのか。
そもそもGⅠ戦において1番人気馬は信用できるのか。週刊アサヒ芸能でおなじみの伊吹雅也氏が解説する。
「20年以降のJRAGⅠ(障害レースを含む)における単勝1番人気の年次別成績を見ると、年によって大きく様相が異なります。19年以前は勝率が3割前後、連対率は5割前後、3着内率が6割前後で、すなわち21年の〈8 7 2 9〉くらいの成績が相場でした。しかし、20年や23年に例年以上にすばらしい結果を残した一方で、22年は5勝止まり。そして今年も明らかに成績が悪い。恐らくこの流れは年末まで続くのではないでしょうか」
22年といえば、お笑い芸人の〝粗品の呪い〟が炸裂し、大阪杯でエフフォーリア(単勝1.5倍)、ヴィクトリアMでもレイパパレ(単勝4.1倍)が着外に沈んだ。今秋も菊花賞で粗品が本命に推したダノンデサイル(単勝2.9倍)が6着に敗れており、呪いのせいかとも思われたが、前出の伊吹氏は一笑に付し、まずは騎乗騎手に注目する。
「20年以降で顕著な成績を収めているのは、坂井瑠星騎手(27)、福永祐一元騎手(47)、ルメール騎手の3人くらい。すでに騎手を引退している福永調教師は外すとして、今年ルメール騎手がGⅠ戦で1番人気馬に騎乗した時の成績は〈1 1 0 3〉と、いまひとつでした(今年の成績は11月17日終了時点。以下同)。ただ、今年の通算成績は優秀で、キャリアハイを狙えるほど絶好調です。20年以降のGⅠ戦では計20勝を挙げて勝率が52.6%(単勝回収率109%)ですから、無理して逆らう理由は見当たりません」
確かに今年のGⅠ戦は、スプリンターズSまでの14戦、すべて違う騎手&調教師が勝利するという〝珍現象〟が起きており、複数回勝利を収めているのは3勝のルメールただ1人。別の角度からアプローチした方がよさそうだ。
伊吹氏が次に注目したのは単勝オッズだ。
「意外にも1倍台と2倍台の1番人気馬の成績に差はありませんが、単勝回収率は85%と99%。2倍台の方が妙味はありますね」
1番人気馬を1着で狙うか否かの分岐点は3倍となる。3倍〜3.9倍では勝率21.1%、4倍以上になると勝率は0%と成績が一気に落ち込むため、単勝オッズで見極めるのも手だ。
「その点からも、チャンピオンズC(12月1日)はレモンポップに注目したいですね。騎乗するのは坂井瑠星騎手。23年のフェブラリーSを最後にGⅠ戦で1番人気馬に騎乗していませんが、これまで3戦3勝と好成績をあげています。あとは当日、どれぐらいの支持を集めるのか、要チェックです」(伊吹氏)
ただ、栗東担当のスポーツ紙記者からは、こんな声も聞こえてくる。
「過去10年のチャンピオンズCで1番人気馬の成績は〈3 3 0 4〉。昨年はレモンポップが1番人気(3.8倍)を背負って優勝しており、連覇のかかる今年は断然人気になるでしょう。しかし、このGⅠで連覇を飾ったのは阪神が舞台だったジャパンCダート時代のトランセンドだけ。20年にクリソベリル(単勝1.4倍)、22年はテーオーケインズ(単勝1.5倍)が連覇に挑みましたが、2頭とも4着に敗れています。それにレモンポップは、前走のマイルCS南部杯で勝利を収めたとはいえ、2着のペプチドナイルとはわずか4分の3馬身差。今回逆転される可能性もありますし、展開しだいでは伏兵の台頭もありそうです」