師走はあっという間に過ぎていく。年末の風物詩でもある有馬記念を翌週に控えた今週のメインは、2歳馬(特に牡馬)の総決算でもある朝日杯FSだ。
2歳馬といえば早熟で、スピードにモノを言わせて頂点に立ってこそ評価されるべき。今月下旬にはGⅠホープフルS(12月28日、中山芝2000メートル)も控えているが、クラシック候補など素質馬ぞろいで、顔ぶれはなかなか豪華だ。
新馬―重賞(サウジアラビアRC)を連勝中のアルテヴェローチェ。その重賞で敗れはしたが、差のない勝負を演じたタイセイカレントとアルレッキーノ。休み明けで挑んだアルテミスSの3着馬ショウナンザナドゥ。デイリー杯2歳Sで僅差2着のドラゴンブースト。新潟2歳S勝ち以降、満を持して挑戦してくるトータルクラリティ。前走の京王杯2歳Sを制して2戦2勝のパンジャタワーなど、いずれの馬が勝っても納得してしまうほど、総決算にふさわしい一戦である。
まずは、過去のデータを見てみよう。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの22年間、その馬単での万馬券は8回(馬連は1回)。この間、1番人気馬は6勝(2着5回)、2番人気馬も6勝(2着4回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は4回。つまり、とんでもない人気薄の馬が連絡みすることはマレだが、必ずしも期待された馬が勝ち負けするわけではない、中穴傾向の一戦とみてよさそうだ。
馬券的には難しく、目移りするが、最も期待を寄せてみたいのは、タイセイカレント。新馬戦を勝ち上がった後の前走、サウジアラビアRCは、ゲートの中でチャカついている時にスタートが切られて最後方から。デビュー戦は逃げ切りだっただけに、陣営は不安がよぎったそうだが、直線のみで鋭く追い上げ、最速の上がり脚で勝ち馬とコンマ1秒差の2着。この走りを見た陣営は改めて能力の高さを意識したという。
その前走から約2カ月になるが、ここを目標にしっかりと調整。1週前の追い切りは軽快でリズミカルだった。まずは万全と思える出走態勢を敷いている。
「前走で賞金を加算できたのは大きい。プールでの調整を含め、思い通りの稽古はできている。この中間は落ち着きが出て、気持ちの面でも成長がうかがえる」
矢作調教師をはじめ厩舎スタッフは、こう状態のよさを強調するほどだ。
父はマイルGⅠで4勝を挙げたモーリスで、母の父は英・愛ダービー馬のガリレオ。母系そのものも欧州の一流血脈で、脚質に幅が出たことでもわかるように、どんな流れになっても問題はなさそう。チャンスは十分とみた。
穴中の穴として大いに注目したいのが、ヒラボクカレラだ。
未勝利(福島芝1200メートル)を勝ち上がったばかりだが、その前走は道悪の中での圧勝劇。末脚がしっかりしており、
「マイルに距離が延びても折り合い面に不安はない。むしろ、いいのでは」
と、厩舎スタッフは口をそろえる。
4代母ビクトリアクラウンはエリザベス女王杯(82年当時は2400メートル)を制しており、血統的にもマイル戦は問題ない。
こちらもモーリス産駒で、一発があっても不思議はない。