昼の時間帯に絶賛再放送されている、2021年度後期のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。12月11日の第18回では、主人公の安子(上白石萌音)らが玉音放送を聞く場面が描かれた。
安子は雉真繊維の長男・稔(松村北斗)と結婚、長女るいが誕生しているが、稔も次男で安子の幼馴染みである勇(村上虹郎)も出征していて不在。安子の母・小しず(西田尚美)と祖母・ひさ(鷲尾真知子)は空襲で死亡した。父・金太(甲本雅裕)は難を逃れたものの、妻と母を死なせてしまった責任を感じ、立ち直れないでいる。そんな中で昭和20年8月15日を迎え、安子は雉眞家のラジオで玉音放送を聞いたのだ。
戦争の終結を国民に伝えるため、昭和天皇自らが行った玉音放送は、8月15日の正午に日本放送協会(現在のNHKラジオ第1放送)で行われた。「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」というフレーズが有名だが、昭和天皇は「朕は帝国政府をして米英支蘇四国に対し其の共同宣言を受諾する旨通告せしめたり」と、連合国側が年7月26日に発した日本への降伏要求の宣言(ポツダム宣言)を受け入れて降伏する決意を国民に知らせている。ここで視聴者には「米英はわかるけど、支蘇って?」との疑問が浮かんだのである。歴史雑誌編集者が説明する。
「ポツダム宣言はアメリカ、イギリス、中華民国の3カ国によって発せられましたが、後にソ連(現在のロシア)が加わって追認しました。『支』は中国を意味する『支那』の頭文字、『蘇』はソビエト連邦を意味する『蘇維埃』の頭文字です。日本とソ連は昭和16年4月に『日ソ中立条約』を結んでいましたが、昭和20年2月に米英ソ3カ国の首脳が集まったヤルタ会談の結果、4月にソ連は日本に中立条約破棄を通告。ソ連はドイツが降伏した後の8月5日に、日本に宣戦布告しました。そして翌日、日本領だった南樺太や千島列島、朝鮮半島北部や満州国に侵攻を開始。8月15日に日本が降伏した後もソ連の攻撃は止まらず、8月下旬から9月にかけてこれら地域は不法に占拠されました。北方領土問題は今も解決できないままでなのです」
ソ連による不法行為はこれだけではない。歴史雑誌編集者が続ける。
「同地域にいた日本人は軍人、一般人ともに捕虜にされ、シベリア各地などに連行されたのです。抑留された日本人は57万人を超え、そのうち約5万8000人が過酷な強制労働や飢え、寒さなどで命を落としています」
ドラマに話を戻そう。ラジオでは天気予報が再開され、稔の父・千吉(段田泰則)は「こねんして、ちょっとずつ元の生活に戻りゃええが」
と希望を口にするが、日本が降伏したとはいえ、戦争がそこで終わったわけではなかったのだ。
出征した稔と勇、そして安子の兄・算太(濱田岳)は無事なのだろうか…。
(石見剣)